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ロシアのウクライナ侵略と憲法9条

2022.04.19

ロシアのウクライナ侵略と憲法9条

                             弁護士 海部 幸造

 

1、ロシアのウクライナ侵略
(1) ロシアのウクライナ侵略が、今このときにも続いています。
ロシアは、子ども達が避難する建物、病院なども砲撃、空爆し、国際司法裁判所の侵攻を即時停止しろという命令(仮保全措置)をも無視し軍事攻撃を続けています。そして、ロシア軍が撤退した後のウクライナ北部では、数多くの市民の遺体が発見され、女性への暴力行為、略奪、破壊が明らかになりつつあり、東部のマリウポリの状況も現時点で厳しく、同市当局の推計では、死者は民間人を含め2万人を超えるとのことです。ウクライナから国外への避難民は500万人といわれています。
本当に許し難い、国連憲章、国際法違反の明白な侵略行為であり、1日でも一瞬でも早く終わらせたいと思います。
(2)改憲派は、ここぞとばかりに「敵基地攻撃能力」「核の共有の検討」「軍事費GN P2%」そして「9条改憲」と声を張り上げ、維新などもその声に追随しあおっています。
しかし、私は、こうした意見は、極めて短絡的、感情的な議論だと考えています。
(3)「弁護士9条の会・おおた」では、去る4月6日に「台湾情勢・ウクライナ問題をどう考えるか ~憲法9条の現実的有効性~」と題して防衛ジャーナリストの半田滋さんにご講演を頂きました。この講演会は、設定をした段階では台湾の問題だけをテーマにしていたのですが、その後ロシアのウクライナ侵略が勃発し、急遽ウクライナ問題もテーマに加えてお話を頂きました。
半田さんは、ロシアのウクライナ侵略の背景、侵略に至る経緯、状況や、台湾を巡る日本、中国、アメリカの状況等々を整理して、ジャーナリストらしく、事実に基づいた、大変わかりやすくお話し頂き、私もとても勉強になりました。
以下は、このときの半田さんのお話を踏まえ、その他、いろいろな方達の論稿を読んでみて、基本的な点のいくつかについて、現段階で私なりに思っていることを、自分自身の整理の為にも簡単にまとめてみたものです。

2、改めて思うこと・・なんとしても戦争を回避すること
今回のことで思うのは、一つは、戦争がいかに悲惨なものであるか、そして、ひとたび戦争になってしまうと、国や権力者の面子、国内状況、権力者の自分の権力維持への固執、その他様々な思惑等々も絡んで、戦争を止めることは本当に難しいということです。
そしてもう一つは、だからこそ、何よりも重要なことは、なんとしても戦争といった状態に至ることのないように事前のあらゆる外交努力を尽くし、安全保障体制を構築することが大切だ、ということです。そのことを、改めて強く思いました。

3、日本国憲法の平和主義
改憲派の人々は「9条があれば平和が守れるのか」等と言います。しかし、日本国憲法の平和主義の意味はそんな単純で抽象的なものではありません。
日本国憲法の前文や9条の意味は、非軍事、外交に徹した安全保障体制を構築する努力を積み重ねていくということ。そうした安全保障体制を構築する上で前文と9条とが大きな指針となると同時に、日本がそうした大原則を掲げているということが相手国にとっても大きな安心材料となる、ということです。意見、体制の異なる相手でも、敵として排斥するのではなく、対話を重視し、そのためのパイプ、関係の構築に努める、ということです。

4、軍事的抑止力論
改憲派の人々は、軍備を拡張することで相手の武力行使を抑止できる、と主張するわけです。しかし、こちらが軍備を増強すれば、相手は更にこちらの軍備に負けないように軍備を増強する。それに対してこちらは更に軍拡をと、互いに軍拡を競り合い、緊張はますます高まっていくことになります。現に歴史的に見ても、そして現状も、そうした事態になっています。また、一方が軍事的威嚇を振りかざせば、相手は「そんなことで脅されはしないぞ」、「退かないぞ」、と威嚇を返し、互いに「いつかは相手が引き下がるだろう」と互いの威嚇がエスカレートしていきます。そうして、軍事的緊張はますます高まります。軍拡の悪循環(安全保障のジレンマ)は結果として国民の安全のリスクをますます拡大します。もしもそうした軍事緊張の中で偶発的にもせよ戦端が開かれ、武力衝突が起きるようなことになったら、国民の命、生活、安全はどうなるのでしょうか。
そうした事態、危険性を軍事的抑止論を振りかざす人々はどこまで考えているのでしょうか。私には、ただ「軍備を増強すれば、相手はリスクを考えて攻めてこないだろう」と、極めて楽観的にしか考えていないように思えます。

5、プーチン大統領の懸念
今回の、ロシアのウクライナへの侵略は、NATOの東方拡大を懸念したことが最大の理由といわれています。すなわち、ソ連の崩壊後ワルシャワ条約機構が解散したのに対して、NATOは存続するだけでなく拡大し、ソ連当時の同盟国やソ連の一部だったバルト3国などもNATOに加盟したこと(結果ソ連当時加盟国は16カ国であったものが現在30カ国)、更にウクライナやジョージアも加盟しようとしているということが、プーチン大統領の大きな懸念であり、それをなんとしても阻止したいということが今回の侵略の基本的な動機だとされています。そして、ウクライナとジョージアのNATO加盟を2008年4月に行われたNATO首脳会談で突然提案したのはアメリカであり、ドイツ、とフランスが「ロシアを刺激する」として反対したにもかかわらず、結局「将来のウクライナ、ジョージアの加盟を支持する」という形で決着し、今日の火種となったのです。
ロシアにしてみれば、旧ソ連当時その一部であった国までが自国と対立する西側の軍事同盟に加入し、そこに自国に向けた西側のミサイルが配備されるようなことになれば自国の安全は危機に瀕する、と懸念(恐怖)したのです。

6、外交による戦争防止の可能性
もちろん、一つの国がどのような軍事同盟に加入するのかはその国の判断の問題ですから、自国の意思を押しつけるために相手の国に攻め込むなどといったことは、到底許されることではありません。上記のような懸念があったとしてもロシアの侵略が合理化されることはいささかもありません。
しかし他方、ロシアのこうした懸念を考慮すれば、ウクライナ側からも、「ウクライナはNATOには加盟せず、中立的立場をとり、同時にロシアや西側諸国がウクライナの安全を保障する体制を作る」といった妥協策はあり得たし、現に戦争が始まった後に、停戦協議でそうした内容がウクライナからも提案された旨の報道がありました。
私が思うのは、そういった内容であれば、戦争が始まる前の段階で十分に検討、協議が出来たのではないか、そうした協議が出来たのであれば、この悲惨な戦争を回避することが出来たのではないか、という事です。
もちろんそれは今になって言うように簡単なことではないのでしょうし、問題は東部2州やクリミアの問題等もありますからなおさらです。しかし、そうした解決の道筋があり得たにもかかわらず、この悲惨な戦争に突入してしまったということは「外交の失敗」という事なのではないかという思いが拭えません。
また、今回のロシアのウクライナ侵略で、これまで中立の立場であったフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟することを検討する旨が伝わり、これに対してロシアはフィンランドとの国境に核部隊を配備すると威嚇をしています。もちろんロシアのそのような威嚇政策(ましてや核兵器による)は強く非難されるべきです。しかし状況は、ますます緊張がエスカレートし、欧州の戦争、さらには第三次世界戦争の可能性すら否定できなくなりつつあります。私は、NATOの拡大は避けるべきなのではないかと考えています。

7、外交、徹底した対話と緊張緩和を
ですから、私は、戦争といった状態に至ることのないようにするためには、軍拡を争うのではなく、武力による威嚇で相手を従わせようとするのではなく、徹底して軍事衝突を回避し、緊張を緩和する方向へ、粘り強く対話を継続することこそが何よりも必要だと考えています。
しかし、今、改憲派や岸田政権がやろうとしていること、はそれとは真逆の、短絡的な反応で緊張を高める方向での施策でしかありません。

8、中国について
中国について言えば、同国の南シナ海、東シナ海や台湾などでの覇権的行動は大きな問題です。強い怒りを覚えます。
しかし、これに対して短絡的に軍事力の増強で対応しようとするのは間違だと思います。それは、互いの軍拡の連鎖の中で緊張を高めるだけであり、現にそうなっています。
特に今、アメリカの対中政策の転換に従って、日本政府は、安保法制の下、奄美大島、沖縄本島、宮古島、石垣島と、ずらりと、中国に向けて、ミサイル基地を作り、横須賀、岩国、佐世保と、日本全体がアメリカの対中戦略体制の最前線基地にされようとしていています。
この状況でひとたび台湾を巡って米中の衝突が起きたならば、それが日本に直接関わりが無くても、安部氏や麻生氏によれば「台湾有事は日本有事」だということですから、日本がアメリカの戦争に巻き込まれる危険がますます現実のものとなってきています。中国との武力衝突の危険性の最大のものは、この点にこそあると考えています。

9、ロシアが北海道に攻めてくる?
ロシアが北海道に攻めてくる、それに備える必要がある、などと言った言説もありますが、全く違うと思います。
先に述べたように、ロシアがウクライナに侵略したのは、西側の軍事同盟であるNATOにウクライナが加盟しようとし、西側がその可能性を否定しない状況にプーチン大統領が恐れを抱いたからです。そのことと比較して考えても、北方4島を既に実効支配しているロシアが、何の為に北海道に攻め込む必要があるというのでしょうか。更に言えば、ロシアは、今回のウクライナ侵攻の理由として「ウクライナにおけるロシア系住民の保護」も上げていますが、北海道においてそのような主張の根拠となり得る現状は全くありません。

10、「敵基地攻撃力」「核の共有」
現在の不安定な安全保障状況の中で、一定程度の軍事力があった方が安心という考えもありますし、私もそうした思いはわかります(いろいろと意見はあるでしょうが)。
しかし、私は、もしそう考えたとしても必要となるのは、攻められた場合に防御する、本当の意味での「専守防衛」の軍事力だと考えています。
「専守防衛」とは、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう。」(令和三年版「防衛白書」)とされています。
敵基地攻撃力や、核兵器の共有などがこの「専守防衛」を大きく逸脱するものであることは明らかですし、現状でこうしたものが必要とされる合理的理由はなにもありません。そのようなものは、中国や北朝鮮との軍事的緊張を高めるだけであり、有害無益だと思います。

11、「アベ改憲」が何を狙っていること
改憲派の人々は、「アベ改憲」について、「9条に自衛隊を書き込むだけ」「自衛隊はこれまでと何も変わらない」などと主張してきました。しかし、「アベ改憲」の提唱者である安倍元首相がこの間声高に叫んでいる内容を見れば、この改憲案が何を狙っているのかは明らかだと思います。
安倍さんは、この間「敵基地攻撃」「敵国の中枢を破壊する能力」「核の共有」といったことを強く主張しています。「アベ改憲」はこうした「核の共有」までをも可能とするものとして構想されていることが提唱者自身のこの間の言説によって明らかなったと思います。
「アベ改憲」は、「自衛隊はこれまでと何も変わらない」どころか、これまで曲がりなりにも建前上「専守防衛」をその制約として認めざるを得なかった自衛隊を、その制約そのものをおおっぴらに外して、海外に出て行って他国を核で攻撃することまでも可能な「軍隊」へと大きく変質させる改憲だということだと考えています。

12、憲法9条
憲法9条があったからこそ、戦後日本は、これまで、ベトナム戦争でも、湾岸戦争でも、アフガン戦争でも、イラク戦争でも、自衛隊を直接、戦闘現場に出すことなく、直接の戦闘行為に巻き込まれずに済んできました。
これに対して昨年の総選挙以来盛んに言われるようになってきた、「敵基地攻撃能力」、「憲法改正」等は、軍拡競争を拡大し、緊張を高め、日本が戦場になる危険を高めるだけであると思います。
平和憲法の精神に基づいて、軍事に依らず、緊張緩和を図り、徹底的な話し合いに基づくに総合的な安全保障の体制を追求すべきですし、憲法9条を持つ日本の独自性を生かした外交努力を行う、そうした政策への転換が求められていると考えています。

2022年4月1日より成年年齢が18歳に引き下げられました

2022.04.11

18歳で成人に

                             弁護士 塚原 英治

2018年になされた民法の改正が2022年4月1日に施行され、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これに伴い様々な法律が改正されています。簡単に見ておきましょう。

● 18歳成人は世界の常識
成年年齢は各国とも選挙権が行使できる年齢や兵役に服する年齢に合わせて定められるのが通常であり、OECD(経済協力開発機構)が2016年にまとめた資料によれば、35の加盟国のうち32の国で18歳とされていました。これより高いのは19歳の韓国と20歳の日本、ニュージーランドだけでした。アメリカは州によって異なり、18歳が45州、19歳が2州、21歳が3州でした。
日本では、2007年制定の日本国憲法の改正手続に関する法律3条が、18歳で投票権を与え、附則で18歳選挙権についての検討・措置を定めたことから、選挙年齢については一足先に議論が進み、2016年6月から18歳に引き下げられていました(2015年の公職選挙法改正)。
裁判員裁判の裁判員の資格は「衆議院議員の選挙権を有する者」と定められているので(裁判員法13条)、18歳で選挙権が認められたときに資格が与えられるべきでしたが、2015年の公職選挙法改正法の附則10条で、「当分の間」職務に就くことができないとされていました。後述の2021年の少年法改正の際にこの附則は削除され、18歳から裁判員として職務に就くことが可能になりました。名簿作成の関係で、裁判員候補の通知が来るのは2023年以降になります。

● 成年になると何が変わるのか
民法818条1項は「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」と定めています。
これまで未成年者の婚姻(男は18歳、女は16歳以上から可能とされていた)には親の同意が必要でしたが(改正前民法737条)、婚姻年齢は男女とも18歳に統一され(民法731条)、18歳で成人になるので、親の同意なく婚姻することが可能になりました(民法737条は無意味な規定になったので削除されました)。
未成年者は、取引の能力が一般的に低いことから、これを保護する必要があるとされています。そこで、民法5条は、1項で、「未成年者が法律行為(注:契約など)をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」、2項で「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。」、3項で「第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。」と定めています。
未成年者が不利な契約をしたときは法定代理人(親権者=親、または未成年後見人)が取り消せる仕組があるのです。
成年になると一人で契約をすることができる代わりに、責任も負うことになります。
若者は経験が乏しく悪質商法などの被害に遭いやすいために、消費者被害の防止策が求められています。
成年者に限られている資格、例えば公認会計士、行政書士、司法書士などは、18歳でも取得可能になります(公認会計士法4条1号など)。もちろん試験に合格する必要があります。
日本国籍の外に外国の国籍も有している場合、「外国及び日本の国籍を有することとなった時が18歳に達する以前であるときは20歳に達するまでに、その時が18歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。」とされ、従来より2年早まりました(国籍法14条1項)。18歳が成年年齢であることにリンクしたものです。外国人が日本に帰化できる年齢も18歳以上で認められることになりました(国籍法5条1項2号)。

● 従来成年に認められていたが、20歳未満ではこれからも認められないものがある
これまで、成年に達した者は養子を取る(養親になる)ことができましたが、18歳では適当ではないとの考えから、養親になるのは20歳に達した者に限られます(民法792条)。
これ以外にも20歳に達するまでは、従来の規制が維持されるものが以下のようにいろいろあります。成年となることを認めた趣旨からは一貫しないものがあります。
飲酒・喫煙は、従来は成年になれば可能でしたが、20歳未満の者の飲酒・喫煙は引き続き禁止されます(「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」1条1項、「二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律」1条)。このため法律の名称も「未成年者ノ・・・」から変更されました。
競馬・競輪・競艇なども20歳未満の者は投票権を買うことができません(競馬法28条等)。

● 少年法は改正されたが、20歳に達するまでは「特定少年」として、20歳以上の者とは異なる扱いを受ける
少年法は、「この法律において「少年」とは、20歳に満たない者をいう。」と定めています(2条1項)。このため、成人に達しても、今後も20歳までは少年法が適用されるのです。
ただし、18歳以上の少年については、2021年の少年法改正により、2022年4月1日から、「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例が適用されます。
家庭裁判所が、保護処分ではなく、懲役、罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合に、事件を検察官に送ることを「逆送」と呼んでいます。逆送された事件は、検察官によって地方裁判所(または簡易裁判所)に起訴され、刑事裁判で有罪となれば刑罰が科されます。
特定少年については、罰金以下の刑の事件でも逆送できるようにするととともに、家庭裁判所が原則として逆送しなければならないとされる事件に、これまでの「16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」に加えて、「18歳以上の少年のとき犯した死刑、無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件」(現住建造物等放火罪、強制性交等罪、強盗罪、組織的詐欺罪など)が追加されました(少年法62条2項2号)。
また、特定少年が逆送されて起訴された場合(非公開の書面審理で罰金等を科す略式手続の場合は除く)には、その段階から、推知報道(氏名・年齢・職業・住居・容ぼうなどによって犯人が誰であるかが分かるような記事・写真等の報道)の禁止が解除されます(少年法68条、61条)。
特定少年は、逆送されて起訴された場合の刑事裁判では、原則として、20歳以上と同様に取り扱われることとなります(少年法67条)。
特定少年の保護処分は、少年院送致(3年以下の範囲内)、2年間の保護観察(遵守事項に違反した場合には少年院に収容することが可能)、6か月の保護観察とされ、家庭裁判所が、犯した罪の責任を超えない範囲内で、いずれかを選択することとなりました(少年法64条1項、3項)。
特定少年については、将来、罪を犯すおそれがあること(ぐ犯)を理由とする保護処分は行わないこととされました(少年法65条1項、3条1項3号)。

● 自立を促進する環境を
18歳成年は、2009年の法制審議会の答申で可とされたものですが、そこでは、「現在の日本社会は、急速に少子高齢化が進行しているところ、我が国の将来を担う若年者には、社会・経済において、積極的な役割を果たすことが期待されている。民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることは、18歳、19歳の者を「大人」として扱い、社会への参加時期を早めることを意味する。これらの者に対し、早期に社会・経済における様々な責任を伴った体験をさせ、社会の構成員として重要な役割を果たさせることは、これらの者のみならず、その上の世代も含む若年者の「大人」としての自覚を高めることにつながり、個人及び社会に大きな活力をもたらすことになるものと考えられる。我が国の将来を支えていくのは若年者であり、将来の我が国を活力あるものとするためにも、若年者が将来の国づくりの中心であるという強い決意を示す必要がある。」と改正の意義が語られていました。
一方で、日本の現実は若年者の自立の遅れを示しています。自立を支えていくためには、社会全体が若年者の自立を支えていくような仕組みを採用する必要があります。家庭、学校においても、一方でなお必要な保護をしながら、他方では、自立・自覚を進める大人扱いが求められています。