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映画『日本人の忘れもの』再上映に寄せて

2021.02.24

映画「日本人の忘れもの」に寄せて

    弁護士 安原幸彦

 中国残留孤児は、1945年の終戦時に、幼い身で中国・満州に置き去りにされ、40年を越える年月を中国で過ごさざるを得ませんでした。そして、中国にいるときは、「日本人」として日本国の戦争責任を背負わされ、やっとの思いで祖国日本に帰ると「中国人」と言われて同胞として扱ってもらえませんでした。そんな中でも、必死に働いてなんとか生き抜いてきましたが、今70代から80代、介護を要する時期を迎えて、日本語が不自由であることに由来する新たな困難に直面しています。

そんな残留孤児のドキュメンタリー映画「日本人の忘れもの」が2月26日から2週間、JR大森駅東口のキネカ大森で上映されます。また同じ時期にDVDも発売されます。70年以上に及ぶ残留孤児の苦闘と希望を捨てずに人生を切り開いてきた姿が見事に描かれています。是非多くの皆様にご覧いただきたいと思います。

私は、残留孤児を遺棄した国の責任を追求する国家賠償訴訟を担当しました。裁判では、終戦時自分たちだけで逃げ帰った軍隊の非情な実態、戦後残留邦人の中国からの帰国を忌み嫌った日本政府の姿勢、国交が回復し帰国が実現した後も自己責任を強調して支援策をとろうとしない政府の施策など、国が残留孤児を見捨て続けた生々しい実態が明らかになりました。その結果、残留孤児を支援すべきだという世論が高まり、2008年になって、ようやく残留孤児独自の新しい生活支援政策を確立することができました。

その過程で私自身、残留孤児の皆さんからたくさんのことを学びました。自助努力を怠らず、社会貢献を常に考える姿勢には本当に頭が下がります。「日本人の忘れもの」では、インタビューでその一端を紹介させていただきました。