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トランプ政権の対外政策に追随する安倍首相を批判する

2017.04.10

トランプ政権のシリア巡航ミサイル攻撃
トランプ政権は、6日、シリアの空軍基地に巡航ミサイル59発を打ち込んだ。それに先立つ4日、シリア・アサド政権が、内戦でサリンなど化学兵器を使用する空爆を行った、と伝えられた。こども30人、女性20人以上を含む一般市民が多数死亡した。国連安全保障理事会(安保理)はこれを調査・非難・制裁しようとしたが、アサド政権を擁護するロシアにはばまれた。トランプ政権はそこに反発し、安保理決議もないまま、勝手な判断でシリアを攻撃したというわけだ。
化学兵器を使用する無差別攻撃は絶対に許されない。しかしトランプ政権の対応も許されない。国際法上他国に武力を行使できるのは、自衛の場合か、安保理決議があった場合に限られる。トランプ政権のシリア攻撃の翌7日、安保理が緊急会合を開き、シリア問題を議論したのも当然だ。そもそも化学兵器を使用したのがアサド政権であるのかも確定していない。仮にそうだったとしても空軍基地への攻撃と言うが、近隣地域でこども4人を含む民間人9人が死亡したと伝えられている。規模の大小はあっても、罪もない民間人を巻き込んでの戦闘行為であることに変わりはない。化学兵器の無差別攻撃が非難されるように、トランプ政権も非難されなければならない。
しかし、安倍首相は「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないという米国政府の決意を日本政府は支持する」「今回の米国の行動は、これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解している」との見解を表明した。国際法にも違反し、民間人をも巻き込んだ戦闘行為を支持し理解するというのだ。アサド政権(未確認)の空爆、トランプ政権の巡航ミサイル使用は、まさに憎しみの連鎖である。ここで肉親を殺害された民間人の中に、アサド政権やトランプ政権を憎み、ISの戦士に参加していく者があったらそれも憎しみの連鎖だ。軍事的な報復は憎しみの連鎖をあおるだけだ。憎しみの連鎖を断ちきらなければ、この世に戦争はなくならない。軍事的な報復(解決)はめざさない、これが憲法9条の心だ。憲法9条の国、日本の首相にあるまじき安倍首相のこの態度。トランプ政権を支持し理解するという安倍首相の発言が、トランプ政権への憎しみを日本に呼び込むことだってあるだろう。安倍首相はその危険性を考えているのか。

北朝鮮への対応
北朝鮮は5日、弾道ミサイル発射を行ったが、この件でトランプ大統領と安倍首相は、6日、電話会談を行った。その際、トランプ氏は「全ての選択肢がテーブルの上にある」と述べたという。当然そこには、対北朝鮮軍事行動という選択肢が含まれていた。このトランプ氏の発言に安倍首相は「高く評価したい」と応じた。
憲法9条は、国際紛争を軍事的に解決しようとすることを固く禁じている。これもまた憲法9条をもつ日本の首相にあるまじき首相の態度だ。加えて、北朝鮮には、在日米軍基地を攻撃する任務を持つ部隊があることが、先般おおやけになった。アメリカと北朝鮮が戦闘状態に入れば、本来無関係な日本が、米軍に基地を提供しているという理由で、北朝鮮から攻撃されることがあからさまになったのだ。日本の安全を守るため、アメリカと北朝鮮が戦闘状態になることは絶対的に回避しなければならない。そのために日本政府は最大限の努力をすべきだ。
トランプ政権の北朝鮮に対する軍事行動の示唆を「高く評価したい」といった安倍首相は、真逆の立場だ。安倍政治は日本の安全保障にも真っ向から反する。日本は六カ国協議、日朝平壌宣言など、北朝鮮と対話する外交努力を進めてきた。安倍首相の発言は、これまでの日本政府の外交努力とも矛盾する。拉致被害者の救出にも背を向けることになる。
これら安倍首相の態度を見ると、彼が憲法9条の改憲を目指す立場がよく理解できる。こんな安倍首相は直ちに退陣してもらいたいものだ。

弁護士 佐藤誠一