コラム
月別アーカイブ: 6月 2021
2021.06.14
弁護士 坪田 優
2020年6月12日、東京都内や神奈川県川崎市等に居住する原告ら総勢29名が、羽田新ルート指定等の取消を求める行政訴訟を東京地裁に提起しました。弁護団の構成員は、東京南部法律事務所所属の佐藤誠一弁護士と私坪田優を含む計6名です。そして現在、第4回口頭弁論期日を9月22日に控えています。
この訴訟では、①都心上空を経由して羽田空港に着陸する新飛行ルート及び川崎市の石油コンビナート地域上空を通って羽田空港から離陸する新飛行ルートの指定、②東京航空局長の東京国際空港(羽田空港)長に対する、川崎市の石油コンビナート地域上空の飛行禁止を定めた昭和45年の規制(旧通知)を撤廃する通知(新通知)の取消をそれぞれ求めています。
①は、「羽田新ルート」と呼ばれる新飛行ルートを指します。「羽田新ルート」には、都心上空を経由する着陸ルート、川崎市の石油コンビナート地域上空を経由する離陸ルートの2つが含まれています。
②は、「航空機は、国土交通省令で定める航空機の飛行に関し危険を生ずるおそれがある区域の上空を飛行してはならない」とする航空法第80条・同施行規則第173条の規定に基づき発出された旧通知による飛行制限を撤廃する新通知のことを指します。コンビナート地域上空の飛行を制限する旧通知が存在する限りは、前述した新離陸ルートを使用することはできません。そこで、国はこれを撤廃する新通知を発出しました。いわば、②は羽田新ルート設定という目的達成のための下準備です。
都心上空やコンビナート地域上空を低空飛行することにより、周辺住民への騒音被害が生じています。羽田新ルート直下の港区などで平日昼間に空を見上げれば、大きな鉄の塊の影が、轟音を立てて空を切り裂いていくのがすぐに分かるはずです。
また、本訴訟では、航空機からの落下物等による危険についても主張していきます。もし、コンビナート施設に航空機の部品等が落下すれば、コンビナート施設を損傷させ、ひいては火災等の大きな災害を引き起こしかねません。前述した旧通知がコンビナート地域上空の飛行を制限していたという事実は、国も落下物の危険性を十分に認識していたということを意味するのではないでしょうか。
本訴訟では、羽田新ルート直下に居住する住民やコンビナート施設で労働に従事する労働者等の生命・身体への危険、騒音による市民の静穏な生活への影響を十分に考慮することなく、「観光立国」の旗印のもとに利便性のみを追求するような国の姿勢の不当性や不正義を明らかにしたいと考えています。
2021.06.04
清見栄弁護士が5月3日に心不全で永眠しました。71歳でした。
清見弁護士は、中央大学法学部を卒業後、1976年に弁護士になり、東京南部法律事務所で45年間活動しました。全国金属労働組合(現在はJMITU)大田地域支部を中心とする多くの地域の労働事件に関与したほか、総評弁護団(現在の日本労働弁護団)の総括事務局として、労働組合の職場活動の調査を主導しました。清見弁護士が主任となり、能力不足を理由とする解雇に厳しい枠をはめて勝利したセガ・エンタープライゼス事件は、代表的な先例として、労働法を学ぶ学生が触れる事件になっています。
また、大田借地借家人組合の顧問として、大田の借地人、借家人のために数多くの裁判を担当して成果をあげました。
趣味の世界では、音楽鑑賞(クラシック)、読書(歴史と経済)、釣などに加えて、中学の頃から真空管ラジオを自作する機械マニアで、パソコンも自作していました。事務所でワープロやパソコンを導入したのは、他の事務所よりかなり早く1982年頃ですが、清見弁護士が中心になっていました。
2019年末にインフルエンザに罹患した後、間質性肺炎などで通院していましたが、この4月まで事務所に出て仕事をしていました。コロナが収束した後に、皆様と共に偲ぶ機会が設けられればと思っています。清見さんゆっくりお休みください。
塚原英治