議会制民主主義を否定する中間報告の濫用による政府与党の共謀罪法案強行採決に強く抗議する声明

 6月14日から夜通し審議が続いた参議院本会議で、15日午前7時46分、政府与党の自民党・公明党そしてその補完勢力である日本維新の会3党は、共謀罪の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法の採決を強行した。これにより反対世論を押し切って、「共謀罪」法が成立した。
共謀罪法案は、法案提出前後を通じ衆参両院で議論されながら、担当法務大臣はろくな答弁ができず、法案の疑問点、問題点はなんら解決することはなかった。対象犯罪となる277の罪についてなぜ共謀を取り締まるのか、その必要性すら明確にならなかった。一番注目された、一般人はこの法律による取締の対象になるのか、という点でも政府の答弁は、イエスなのかノーなのか判然とせず終わった。処罰要件の準備行為も日常的な行為がそのまま準備行為とされる余地があり、要件としての無意味であることが明らかとなった。まだまだ国会で審議を尽くすべきことは多々あった。しかし政府は国民の徹底審議を求める声に背を向けて、採決を強行した。そのことだけでも許されない。
しかし今回はそれだけでなく、国会法を濫用して、所管の法務委員会での採決を省略し、本会議で委員長に中間報告させるだけでの強行採決であったことは特に重大である。この国会法の規定は、「特に緊急を要する」あるいは「特に必要」な場合の規程で、共謀罪はこれに当たらない。委員会での採決を省略するなど、これは議会制民主主義の否定であり、良識の府、熟議の府と言われる参議院にあっては存在意義を自己否定するにも等しい暴挙である。
私たちは政府与党の一連の行動に強く強く抗議するものである。
国会が会期末を控え、審議の時間が足りないのであれば、会期を延長すればよい。都議選が控えているとはいえ、国政選挙でない以上会期延長の妨げとはならない。しかし会期を延長しなかったのは、安倍首相に対する加計学園問題のこれ以上の責任追及を避けるためであったことは明白である。共謀罪法案の早期成立と安倍首相責任逃れと二重の狙いがあった強行採決であった。
私たちはこうした党利党略で議会制民主主義のルールを破る政府与党及びその補完勢力の暴挙はいっそう許すことはできない。
私たちは引き続き共謀罪の廃止を求めて奮闘する決意である。同時に今後予想される安倍内閣の憲法9条改悪の動きに対しても、断固として闘う決意である。
以上声明する。

2017年6月15日
東京南部法律事務所