弁護士 坪田 優
東京南部法律事務所では、オンライン連続講座として「大人の憲法教室」を開催しています。
その第1回である3月16日には、「 助け合える社会を創る~『子ども食堂』はじめの一歩」というテーマで、気まぐれ八百屋だんだんの店主である近藤博子さんにお話しいただきました。
気まぐれ八百屋だんだんは、2008年、週末限定の八百屋として始まりました。近藤さんは、八百屋に来店するお客さん一人ひとりの身の上話を聞いているうちに、地域の方々が集まることができるような場所を作りたいと考えるようになり、2009年には「ワンコイン寺子屋」と称して、500円で子供たちに勉強を教える活動を始めました。八百屋の枠を超え、活動の幅を広げる中、母親の病気が理由で食事をバナナ一本で済ませることがあるという子供の話を聞いたことをきっかけに、2012年8月、近藤さんはだんだんの店内で子供食堂の活動を始めました。
近藤さんが考案した「子ども食堂」という名称は、子どもが一人で入っても怪しまれない場所、という意味合いでつけられたのだそうです。現在、子ども食堂という言葉を聞いて思い起こされるキーワードは、やはり「子どもの貧困」だと思いますが、近藤さんの最初の思いは、必ずしも子どもの貧困のみにフォーカスしたものではなく、更に広く、子どもから老年の方、世代を問わずに地域全体のつながりをつくることにあったのだそうです。
新型コロナウイルス感染拡大の収束の気配が見えない中、通常の子ども食堂の活動は停止せざるを得なかったそうです。しかし、長期休校により給食を食べられなくなった子供たちのため、だんだんでは、地域の飲食店の方にご協力してもらいながら、子供たちに向けたお弁当を作り、提供するようになりました。また、食材のおすそわけ、として、寄付によって集まった食材を無償で配布するなどの活動も行われています。
今回、だんだんにおける近藤さんの活動をお聞きして、人と人とがつながることの重要性を改めて感じました。また、まだ小さな子供たちにも、誰かに何かをしてあげたいという気持ちがあるというお話が印象的でした。現在では、過去にだんだんに通って勉強を教わっていた子供たちが、逆に自分が教える立場になって戻ってきてくれたりもするそうです。このような正の連鎖によって、分断されていた個人がつながり、人と人とが助け合う社会が築き上げられるのではないでしょうか。
今後も、東京南部法律事務所ではみなさまに魅力的な講師の方々のお話をお届けしたいと考えています。今後の企画にも是非ご参加ください。