弁護士 坪田 優
2020年6月12日、東京都内や神奈川県川崎市等に居住する原告ら総勢29名が、羽田新ルート指定等の取消を求める行政訴訟を東京地裁に提起しました。弁護団の構成員は、東京南部法律事務所所属の佐藤誠一弁護士と私坪田優を含む計6名です。そして現在、第4回口頭弁論期日を9月22日に控えています。
この訴訟では、①都心上空を経由して羽田空港に着陸する新飛行ルート及び川崎市の石油コンビナート地域上空を通って羽田空港から離陸する新飛行ルートの指定、②東京航空局長の東京国際空港(羽田空港)長に対する、川崎市の石油コンビナート地域上空の飛行禁止を定めた昭和45年の規制(旧通知)を撤廃する通知(新通知)の取消をそれぞれ求めています。
①は、「羽田新ルート」と呼ばれる新飛行ルートを指します。「羽田新ルート」には、都心上空を経由する着陸ルート、川崎市の石油コンビナート地域上空を経由する離陸ルートの2つが含まれています。
②は、「航空機は、国土交通省令で定める航空機の飛行に関し危険を生ずるおそれがある区域の上空を飛行してはならない」とする航空法第80条・同施行規則第173条の規定に基づき発出された旧通知による飛行制限を撤廃する新通知のことを指します。コンビナート地域上空の飛行を制限する旧通知が存在する限りは、前述した新離陸ルートを使用することはできません。そこで、国はこれを撤廃する新通知を発出しました。いわば、②は羽田新ルート設定という目的達成のための下準備です。
都心上空やコンビナート地域上空を低空飛行することにより、周辺住民への騒音被害が生じています。羽田新ルート直下の港区などで平日昼間に空を見上げれば、大きな鉄の塊の影が、轟音を立てて空を切り裂いていくのがすぐに分かるはずです。
また、本訴訟では、航空機からの落下物等による危険についても主張していきます。もし、コンビナート施設に航空機の部品等が落下すれば、コンビナート施設を損傷させ、ひいては火災等の大きな災害を引き起こしかねません。前述した旧通知がコンビナート地域上空の飛行を制限していたという事実は、国も落下物の危険性を十分に認識していたということを意味するのではないでしょうか。
本訴訟では、羽田新ルート直下に居住する住民やコンビナート施設で労働に従事する労働者等の生命・身体への危険、騒音による市民の静穏な生活への影響を十分に考慮することなく、「観光立国」の旗印のもとに利便性のみを追求するような国の姿勢の不当性や不正義を明らかにしたいと考えています。