「フリーランス」の保護について

弁護士 竹村 和也

1 「フリーランス」とは

「フリーランス」という働き方がニュースなどで耳にすることが多くなりました。街中でみかけるようになったウーバーイーツなどの配達員を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。新型コロナウイルスの影響で、「フリーランス」と呼ばれる方が、発注者から契約を一方的に切られたり、報酬が支払われなかったりして、生活に困窮する方が多くいたという報道もありました。そのような「フリーランス」の働き方をどのように保護するのかが議論されています。そのようななか、政府も、2022年9月、「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」という文書を発表し、「フリーランス」保護のための立法をすることを明らかにしました。

では、そもそも、「フリーランス」とは誰を指すのでしょうか。先の「方向性」によれば、「業務委託の相手方である事業者で、他人を使用していない者」とされています。何とも分かりにくい表現ですが、誰も雇わずに業務委託で働く個人の事業者を指すものと思います。

 

2 「労働者」として保護されるべき人も多くいる

注意が必要なのは、「フリーランス」と呼ばれたり、業務委託という名称の契約のもとで働いていたとしても、「労働者」として保護されるべき人が多くいるということです。労働基準法、労働契約法などの「労働法」が適用される「労働者」かどうかは、そのような名称で決まるのではなく、働き方の実態で決まります(ここでは触れませんが、労働組合法は更に広く適用されます)。

大きな問題は、実際には労働法が適用される労働者であるにもかかわらず、「フリーランス」と呼ばれて、労働法による保護が受けられないかのように対応されていることです。まずは、「フリーランス」などと呼ばれていても、労働法の適用について厳しく審査される必要があります。

これまでも、一人親方と呼ばれる建設業の方、自分で所有するトラック等で配送業に従事する方などについて、同じ問題が指摘されてきました。しかし、情報通信技術が発達したことで、「働き方」が現代化していることも考える必要があります。例えば、ウーバーイーツの配達員もそうですが、オンラインのプラットフォームを通じて仕事が受発注される「クラウドソーシング」というサービスが発展しています。これまでの労基署や裁判所の「労働者」に関する判断はあまりに硬直的なものであり、このような現代的な働き方に対応できない可能性があります。広く労働者として保護するために、従来の考え方を見直す必要があります。

また、「フリーランス」と呼ばれる方が、労働法の適用を求めて争うことは大変な労力です。そのため、迅速に保護を受けられるような制度にする必要があります。一定の働き方に対しては労働者であると「推定」して広く保護したり、労働基準監督署等の救済機関を充実させる方法などが考えられます。

いずれにしても、「フリーランス」と一括りにする前に議論すべきことは多くあるように思います。

 

3 労働者でないとしても

労働者でない場合でも、契約の一方的変更や報酬の不払いは認められませんし、契約の打ち切り等も場合によっては制限されることもあります。また、独占禁止法や下請法などによって保護される場合もあります。先の政府による「方向性」もそのような保護の一環だと思われますが、不十分な点が多々あります。「フリーランス」と呼ばれる方が本当に保護されるような制度作りのために注視が必要です。