コラム

65歳定年制及び定年後再雇用規程を有する大学で定年後の再雇用拒否を無効とする判決獲得

2017.06.19

当事務所の黒澤有紀子弁護士と安原幸彦弁護士が担当した事件で勝訴判決を獲得しました。判決は、判例時報2328号129頁、労働判例1152号13頁に掲載されています。

1 事案の概要

被告である尚美学園は、その専任教員の定年を就業規則上、満65歳としていました。そのうえで、定年退職した専任教員を特別専任教員として雇用する旨の規程及び長年の例外なき再雇用の前例もありました。特別専任教員の契約期間は1年間であり、契約更新は70歳を限度とされています。原告である労働者は、専任教員として採用されましたが、採用の申込みを行う前に、被告から、65歳を超えると70歳まで総報酬が従前の7割になるものの、職務内容等の労働条件は変わらず、70歳まで雇用保障がされているとの説明を受けました。原告は、この説明内容にメリットを感じ、それが確実に履行されるものと信じて、被告に転職することを決意し、前職に退職願を提出しました。

しかし、被告は、原告が65歳で定年となった後、採用前の説明及び原告の希望にもかかわらず、所属する学部で初めてのケースとして、特別専任教員として再雇用することを拒否しました。原告は、特別専任教員としての労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるなどして、東京地方裁判所に訴えました。なお、原告は、労働組合の副執行委員長です。再雇用拒否に当たり、労働組合への協議はありませんでした。

2 事件で問題となった点

この事件は、65歳定年制を採用する使用者において、定年後再雇用制度を定め、採用前に再雇用する旨の説明が行われ、かつ、就業規則の運用として従前は希望した全員が例外なく再雇用されていた場合、定年退職した労働者に再雇用後の地位が認められるかが争われました。この事件で難しいのは、定年によって一旦退職しているとされることです。つまり、再雇用は、形式的に見ると新たな雇用であり、使用者の裁量権の範囲内と位置づけられかねません。定年後再雇用の事案においては、有名な津田電気計器事件(最判平成24年11月29日労判1064号13頁)がありますが、これは60歳定年の事件であり、高年法9条1項2号所定の継続雇用制度を導入した事案だったことが大きな特徴でした。今回の事件は、65歳定年制を採用している使用者(大学)における再雇用ということで高年法は適用外の事件です。そういった場合に、労働者(教員)に再雇用後の地位を確認できるのかが争われた事件でした。

3 65歳定年制で再雇用拒否を無効とする画期的判決

東京地裁は、以上の争点について、以下のように判示しました。

「労働者において、定年時、定年後も再雇用契約を新たに締結することで雇用が継続されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合、使用者において再雇用基準を満たしていないものとして再雇用をすることなく定年により労働者の雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情がない限り、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、この場合、使用者と労働者との間に、定年後も就業規則等に定めのある再雇用規程に基づき再雇用されたものと同様の雇用関係が存続してきるものとみるのが相当である(労契法19条2号類推適用、最高裁平成23年(受)第1107号同24年11月29日第1小法廷判決・裁判集民事242号51頁参照)。」本件事実関係の下においては、「定年時、本件再雇用契約を締結し、70歳まで雇用が継続すると期待することが合理的である。」「確かに、本件は、高年齢者雇用安定法の適用のない事案ではあるが、労働者に雇用継続への合理的期待が生じた場合、その期待を法的に保護し、期間満了による契約の終了に制約を課すという労契法19条2号の趣旨は、本件のような定年後再雇用においても妥当するといえる。ただし、定年後再雇用の場合、直近の有期労働契約が存在しないため、従前と同一の労働条件で労働契約が更新されると擬制することができない。したがって、同条を類推適用し、本件規程が定める再雇用制度に基づく労働契約上の地位にあるものとみなすのが相当である」。

東京地裁は、原告の主張を認め、労働契約法19条2号の類推適用という新たな法律構成を採り、原告の特別専任教員としての地位を認めたのです。65歳定年制を前提とする再雇用事案において、再雇用後の地位を認めた判決であり、高齢者雇用について非常に重要な判決と言えます。

 

議会制民主主義を否定する中間報告の濫用による政府与党の共謀罪法案強行採決に強く抗議する声明

2017.06.15

 6月14日から夜通し審議が続いた参議院本会議で、15日午前7時46分、政府与党の自民党・公明党そしてその補完勢力である日本維新の会3党は、共謀罪の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法の採決を強行した。これにより反対世論を押し切って、「共謀罪」法が成立した。
共謀罪法案は、法案提出前後を通じ衆参両院で議論されながら、担当法務大臣はろくな答弁ができず、法案の疑問点、問題点はなんら解決することはなかった。対象犯罪となる277の罪についてなぜ共謀を取り締まるのか、その必要性すら明確にならなかった。一番注目された、一般人はこの法律による取締の対象になるのか、という点でも政府の答弁は、イエスなのかノーなのか判然とせず終わった。処罰要件の準備行為も日常的な行為がそのまま準備行為とされる余地があり、要件としての無意味であることが明らかとなった。まだまだ国会で審議を尽くすべきことは多々あった。しかし政府は国民の徹底審議を求める声に背を向けて、採決を強行した。そのことだけでも許されない。
しかし今回はそれだけでなく、国会法を濫用して、所管の法務委員会での採決を省略し、本会議で委員長に中間報告させるだけでの強行採決であったことは特に重大である。この国会法の規定は、「特に緊急を要する」あるいは「特に必要」な場合の規程で、共謀罪はこれに当たらない。委員会での採決を省略するなど、これは議会制民主主義の否定であり、良識の府、熟議の府と言われる参議院にあっては存在意義を自己否定するにも等しい暴挙である。
私たちは政府与党の一連の行動に強く強く抗議するものである。
国会が会期末を控え、審議の時間が足りないのであれば、会期を延長すればよい。都議選が控えているとはいえ、国政選挙でない以上会期延長の妨げとはならない。しかし会期を延長しなかったのは、安倍首相に対する加計学園問題のこれ以上の責任追及を避けるためであったことは明白である。共謀罪法案の早期成立と安倍首相責任逃れと二重の狙いがあった強行採決であった。
私たちはこうした党利党略で議会制民主主義のルールを破る政府与党及びその補完勢力の暴挙はいっそう許すことはできない。
私たちは引き続き共謀罪の廃止を求めて奮闘する決意である。同時に今後予想される安倍内閣の憲法9条改悪の動きに対しても、断固として闘う決意である。
以上声明する。

2017年6月15日
東京南部法律事務所

共謀罪法案の衆議院本会議強行採決に断固抗議し、改めて共謀罪法案の廃案を勝ち取る決意の声明

2017.05.26

共謀罪法案の衆議院本会議強行採決に断固抗議し、改めて共謀罪法案の廃案を勝ち取る決意の声明

 5月23日、政府与党の自民党・公明党そしてその補完勢力である日本維新の会3党は、共謀罪法案を衆議院本会議で強行採決した。私たちはこの暴挙に断固抗議し、参議院での徹底審議を求め、改めてこの法案の廃案を勝ち取るために全力を尽くすことを決意し、この声明を発表する。

共謀罪法案は、今国会で法案提出前からその問題性が論議されてきた。法案提出前後を通じて、担当法務大臣はろくな答弁ができず、法案提出前には答弁を拒否するペーパーを出し、法案提出後は野党の反対を押し切って国会質疑に官僚を出席させ答弁させるなど醜態をさらしてきた。このような国会質疑では、この法案の疑問点、問題点はなんら解決することなく、いっそう廃案とする外ないことが明らかとなってきた。
朝日新聞の世論調査(5月)でも、法案の内容について「あまり知らない」・「全く知らない」が63%に達し、今国会での成立は「必要ない」が同様に64%となっている。これは国民の間に十分な理解がされていない、政府が説明責任を果たしていないことを示している。
政府はテロ対策・国際組織犯罪防止条約締結のためというが、同条約はテロ対策と無関係であること、現行法で取締ができない事例の説明に矛盾があること、処罰対象がまだ犯罪に至らない人の内心であって憲法の思想良心の自由保障(19条)に違反する恐れがあること、処罰条件となる準備行為が日常生活上の行為と区別がつかないこと、一般市民が取締まりの対象となって広くその日常生活が監視の対象となっていくこと、などが明らかになった。
このようにこの法案は、日常的に市民が集い、語り合い、行動する計画を練ることを敵視し、これを監視・介入・処罰しようとするものであり、結果的に人々を萎縮させ、自由にものを言えない社会、監視社会へと導いていくことになる。民主主義を根幹から破壊する悪法である。徹底審議に背を向けた、今回の衆議院本会議強行採決に断固抗議する。
政府はこの法律が2020年オリンピック・パラリンピックのために必要といってきた。5月3日、安倍首相は、その2020年までに憲法9条に3項を加える改憲を実現する意欲を公表し、その後9条「改悪案」を年内に練り上げるよう自民党に指示した。共謀罪法案の審議の最中の安倍首相の行動は、実は共謀罪が戦争する国づくりと一体となっていることを示している。
私たちは、このような共謀罪に断固反対し、今後も同法案の廃案を勝ち取る決意である。
以上声明する。
2017年5月26日
東京南部法律事務所

トランプ政権の対外政策に追随する安倍首相を批判する

2017.04.10

トランプ政権のシリア巡航ミサイル攻撃
トランプ政権は、6日、シリアの空軍基地に巡航ミサイル59発を打ち込んだ。それに先立つ4日、シリア・アサド政権が、内戦でサリンなど化学兵器を使用する空爆を行った、と伝えられた。こども30人、女性20人以上を含む一般市民が多数死亡した。国連安全保障理事会(安保理)はこれを調査・非難・制裁しようとしたが、アサド政権を擁護するロシアにはばまれた。トランプ政権はそこに反発し、安保理決議もないまま、勝手な判断でシリアを攻撃したというわけだ。
化学兵器を使用する無差別攻撃は絶対に許されない。しかしトランプ政権の対応も許されない。国際法上他国に武力を行使できるのは、自衛の場合か、安保理決議があった場合に限られる。トランプ政権のシリア攻撃の翌7日、安保理が緊急会合を開き、シリア問題を議論したのも当然だ。そもそも化学兵器を使用したのがアサド政権であるのかも確定していない。仮にそうだったとしても空軍基地への攻撃と言うが、近隣地域でこども4人を含む民間人9人が死亡したと伝えられている。規模の大小はあっても、罪もない民間人を巻き込んでの戦闘行為であることに変わりはない。化学兵器の無差別攻撃が非難されるように、トランプ政権も非難されなければならない。
しかし、安倍首相は「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないという米国政府の決意を日本政府は支持する」「今回の米国の行動は、これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解している」との見解を表明した。国際法にも違反し、民間人をも巻き込んだ戦闘行為を支持し理解するというのだ。アサド政権(未確認)の空爆、トランプ政権の巡航ミサイル使用は、まさに憎しみの連鎖である。ここで肉親を殺害された民間人の中に、アサド政権やトランプ政権を憎み、ISの戦士に参加していく者があったらそれも憎しみの連鎖だ。軍事的な報復は憎しみの連鎖をあおるだけだ。憎しみの連鎖を断ちきらなければ、この世に戦争はなくならない。軍事的な報復(解決)はめざさない、これが憲法9条の心だ。憲法9条の国、日本の首相にあるまじき安倍首相のこの態度。トランプ政権を支持し理解するという安倍首相の発言が、トランプ政権への憎しみを日本に呼び込むことだってあるだろう。安倍首相はその危険性を考えているのか。

北朝鮮への対応
北朝鮮は5日、弾道ミサイル発射を行ったが、この件でトランプ大統領と安倍首相は、6日、電話会談を行った。その際、トランプ氏は「全ての選択肢がテーブルの上にある」と述べたという。当然そこには、対北朝鮮軍事行動という選択肢が含まれていた。このトランプ氏の発言に安倍首相は「高く評価したい」と応じた。
憲法9条は、国際紛争を軍事的に解決しようとすることを固く禁じている。これもまた憲法9条をもつ日本の首相にあるまじき首相の態度だ。加えて、北朝鮮には、在日米軍基地を攻撃する任務を持つ部隊があることが、先般おおやけになった。アメリカと北朝鮮が戦闘状態に入れば、本来無関係な日本が、米軍に基地を提供しているという理由で、北朝鮮から攻撃されることがあからさまになったのだ。日本の安全を守るため、アメリカと北朝鮮が戦闘状態になることは絶対的に回避しなければならない。そのために日本政府は最大限の努力をすべきだ。
トランプ政権の北朝鮮に対する軍事行動の示唆を「高く評価したい」といった安倍首相は、真逆の立場だ。安倍政治は日本の安全保障にも真っ向から反する。日本は六カ国協議、日朝平壌宣言など、北朝鮮と対話する外交努力を進めてきた。安倍首相の発言は、これまでの日本政府の外交努力とも矛盾する。拉致被害者の救出にも背を向けることになる。
これら安倍首相の態度を見ると、彼が憲法9条の改憲を目指す立場がよく理解できる。こんな安倍首相は直ちに退陣してもらいたいものだ。

弁護士 佐藤誠一

固定残業代の有効性が否定され、長時間労働について使用者の安全配慮義務違反が認められた判決

2017.03.10

固定残業代の有効性が否定され、長時間労働について使用者の安全配慮義務違反が認められた判決(東京地裁平成28年5月30日判決判例タイムス1430号201頁)

東京地裁にて固定残業代と安全配慮義務違反の判断について重要な判決を獲得しましたので、ご紹介します(判例タイムス1430号に掲載されています。)。

1 36協定のない事業場で固定残業代の有効性を否定
昨今、固定残業代が問題となっています。固定残業代とは、時間外労働や深夜労働・休日労働の割増賃金の支払いに代えて、一定額の手当を支払ったり、基本給に割増賃金を組み込んで支給するものです。これが残業代の支払いとして認められれば、残業代計算の基礎賃金の計算から固定残業代が除かれ、また固定残業代分の残業代支払いが認められてしまうことになります(固定残業代については、拙文「固定残業代をめぐる幾つかの問題点」POSSE26号所収を読んで見てください。)。また、割増賃金の支払いが別途認められないことにより長時間労働の抑制が効かず、長時間労働を強いられる傾向にもあります。
この固定残業代の有効性については、裁判例(*)が積み重なってきているところですが、私の担当した事件では、36協定が締結されていなかったことが問題となりました。この点について、裁判所は「本件で36協定が存在しない以上、少なくとも本件契約のうち1日8時間以上の労働時間を定めた契約部分は無効であるところ、いわゆる固定残業代の定めは、契約上、時間外労働させることができることを前提とする定めであるから、当該前提を欠くときは、その効力は認められないはずである」として、固定残業代の有効性を否定しました。36協定が締結されていないと、そもそも固定残業代は有効ではない、と判断したのです。36協定とは、使用者が労働者を法定時間外労働させるために締結しなければいけないものです。その協定がない以上、時間外労働を前提とする固定残業代の合意は認められない、という判断です。36協定を締結しないまま長時間労働を強いている事業場は未だ多くあり、固定残業代の有効性を否定することによって、一定の歯止めをかけたと言えます。

*固定残業代の有効性について、裁判例は、①「割増賃金」にあたる部分と「通常の労働時間の賃金」にあたる部分が明確に区分されていること、②割増賃金の対価という趣旨で支払われていること、②固定残業代超過分の清算合意があるか、清算の実態があること、という3つの要件を求める傾向にあります。

2 病気にならなくても長時間労働による慰謝料を認める
この事件は、毎月80時間以上を超える残業が裁判所で認定されました。月80時間越えの時間外労働はいわゆる過労死基準を超えるもので危険です。原告は、この点について安全配慮義務違反に基づいて慰謝料を請求しました。ただ、原告は長時間労働を強いられたものの、病気にはなっておらず、この点で損害が認められるのかが問題となりました。
裁判所は、「会社は、36協定を締結することもなく、原告を時間外労働に従事させた上、…会社においてタイムカードの打刻時刻から窺われる原告の労働状況について注意を払い、事実関係を調査し、改善指導を行うなどの措置を講じたことを認めるに足りる証拠はない。したがって、会社には安全配慮義務違反の事実が認められる。…結果的に原告が具体的な疾患を発症するに至らなったとしても、会社は安全配慮義務を怠り、1年余にわたり、原告を心身の不調をきたす危険があるような長時間労働に従事させたのであるから、原告には慰謝料相当額の損害が認められるべきである」。と判断しました。精神疾患等の症状が認定されない場合でも慰謝料を認めたのです。これまで長時間労働を強いられながらも、病気に罹患していない限り、損害賠償請求は認められない傾向になりましたが、この判決はこの点でも画期的なものであり、是非参照してもらいたいと思います。

弁護士 竹村和也

今年のヒロシマの夏

2016.08.31

8月4、5日、広島に「仕事」で行ってきました。小学4年生になった息子に、原爆ドームや記念資料館を見せて、戦争や平和について考えるきっかけになれば、、、と思って、息子連れで行きました。
「仕事」の間退屈していた息子は、「仕事」が終わり、ホテルに荷物を置いて外に出ると、まるで水を得た魚のように生き生きとして、とても楽しそうに、禎子さんの像を見て、原爆ドームも見て、広い平和公園をスキップして歩き、、、、資料館の前まできました。
そして、そこで、思ってもみない強烈な一言が息子から出たのです。
「ここ、入るの、いーやーだーーー」
「ここまで来てそれはないでしょう」と思って、必死に説得を試みる私。
しかし、誰に似たのか(いえいえ、彼のオリジナルなのでしょう)、すごい頑固で、考えを変えない息子。
「やーだー、こわい」、「夢に出る。こわい」、「知らなくていいしー」考えつく説得をすべて試みたけれど、譲らない息子。あと5歩で資料館の入り口という場所で、延々と5分間議論となったのでした。
この日は夕方5時でも、まだ、うだるように暑くて、汗が止まらない。もう万策尽きてどうしようもなくなって、つい、「暑いよ。もう、限界。あのドアの向こうにはクーラーがあるよ。とにかく入ろうよ」。
すると、息子、気が抜けるほどあっさりと、「そーだね」と、すたすたと入っていくではありませんか。そんなこんなで入った記念資料館ですが、息子が、食い入るように真剣
に展示を見ていたという小説のような展開には、もちろんならず。資料館内でも、「こーわーいー。早くでーたーいー」「キノコ雲とか書いてあるけど、キノコの形に見えないしー」とぶつぶつ言う息子。
なんだか思っていたのとは全く違った資料館見学でした。
子どもは私とは違う、子どもは子どもで独立した人格なんだと当たり前のことを改めて思うとともに、息子は息子なりに自分の気持ちや心を守ろうと必死なんだな、そういうところを大切にしてあげなきゃな、と思いました。
その一方で、やっぱり過去に日本であった戦争のことはきちんと知って平和について考えて欲しいなと思ったのでした。
後日、この話をSNSにあげると、ママ友のみなさんからは様々な反響がありました。
子どもにきちんと資料館を見せたいという人、子どもが見ることができるまで待ちたいという人、いろいろな人がいました。どの意見にもなるほどと思って、とても考えさせられました。
子どもが何を怖いと思い、どういう理由でそれを乗り越えて見れるのかは、その子によって違うのだろうと思います。だから、子どもに戦争や平和を、いつ、どう伝えるかについても、正解はないのだろうと思います。
私も含めて戦争を知らない子どもが多くなっていく今、戦後71年日本の土台となってきた日本国憲法を変えようとする意見が出ている今、創意工夫をして、被害の歴史も加害の歴史もすべて戦争の歴史を語り継いでいくことの必要性を強く感じたヒロシマの夏でした。

弁護士 長尾 詩子

広島1 広島2

リオオリンピックで熱い感動

2016.08.25

リオオリンピックが閉幕しました。17日間の世界のトップアスリートの熱い闘いに感動の時間を過ごさせてもらいました。オリンピックが始まる前までは、2020年の東京オリンピック招致に関する様々な問題(国立競技場の問題やら、予算の問題やら。)に、「東京オリンピックなんていっそのこと返上したら。」「リオオリンピックなんか興味ないや。」などというネガティブな気持ちがむくむくとわき上がっていましたが、いざオリンピックが開幕すると、どんな競技でもスポーツそれ自体が持つ本質的なおもしろさ、想像を絶する鍛錬とそれを遂行する人間の精神力、人間の可能性の限界に挑むアスリートたちの姿にすっかり心を掴まれてしまいました。
そうした中でも、私が注目したのは男子卓球です。何を隠そう、私は中学生時代、卓球部に所属していました。運動神経も鈍く、市内の中学校の大会では1回戦負けを続けるさえない選手でした。それに、中学校を卒業後は全く卓球から離れてしまったので、今は素人同然ではあります。このため、中学生時代の競技感覚に照らして見るしかないのですが、それでも世界水準の選手の実力は想像を絶するほどです。特にラリーの連続、前陣からの速攻、これに瞬時に対応する運動神経、後陣から高速ドライブを狭い卓球台の、しかも相手方のサイドに返球するラケット裁き、空間把握能力は、「すごい」、「人間離れしている」の一言です。日本男子卓球代表の水谷隼選手は、卓球の「ネクラ」「ダサイ」というイメージを変えて、卓球をメインストリームのスポーツにしたい、という希望を語っていましたが、彼自身の今回の活躍(男子単で銅メダル、団体で銀メダル)は、少年少女には卓球をやってみたい、大人にはもっと卓球を観戦したい、応援したい、という気持ちを起こさせたのではないでしょうか。
ということで、東京オリンピックですが、「マリオ」に扮して人気取りをしようなどと考える政治家の宣伝の舞台ではなく、アスリートファースト、そして、一都民として気持ちよく応援できるオリンピックになるよう4年後を期待していきたいと思います。
弁護士 堀 浩介

南部山部夏合宿

2016.08.18

8/2~8/4、6名の部員プラスゲスト1名で、南八ヶ岳に行ってきました。初日、桜平(1900m)から夏沢峠(2440m)を目指しました。夏沢峠からは北へ箕冠山(みかぶりやま)・根石岳(2603m)・天狗岳(2640m)と縦走し、本沢温泉(2110m)で一泊。2日目は南八の核心部、硫黄岳(2760m)・横岳(2829m)・赤岳(2899m)を縦走し、赤岳鉱泉(2220m)で一泊。3日目は中山展望台から前日の縦走路を眺め、美濃戸口まで下山し(1490m)帰路につきました。登っては降り登っては降りの連続、山部としては本格的な山旅となりました。
八ヶ岳は変化に富んだ魅力あふれる連峰です。岩峰の連なりを美しい森が包みます。森は美しい苔がびっしりと絨緞のように敷き詰められた中、シラビソ、ダケカンバなどがうっそうとしかし静かにたたずむ、八ヶ岳特有の森です。私は随所で桂(かつら)を思わせるほのかな甘い香りを味わいました。心が和むすばらしい森でした。
核心部の縦走路は、鎖場が連続する岩峰地帯をスリリングなルートをたどりました。そのスリリングさにわくわくする部員もいれば、足がすくむ部員もいました。縦走の間、うっすら雨模様で周囲の景観を見ることができませんでしたが、かえって高度感を感じずに済んで(知らぬが花?!)よかったかもしれません。赤岳山頂にたどり着いたときには、この上ない達成感をものにすることができました。その赤岳の下り、直滑降を思わせる鎖場のルートも、スキップを踏むような気分であっという間に通過していました。
きついルートでしたが、高山植物が目を楽しませてくれました。森の中ではユーモラスなホタルブクロの赤紫が目につきました。高所ではチシマギキョウのすがすがしい紫、可憐なコマクサの薄いピンクが鎖場の緊張感を和ませてくれました。コマクサは大変な数が咲き乱れ、地元の方々の保護へのご苦労がしのばれました。本沢温泉への沢沿いの土手では、銀竜草のめずらしいほどの群落と出会いました。
初日、オーレン小屋でランチをとろうとしたときにはカモシカがお出迎え。3日目、美濃戸口への下山時には、黒地に白い縁取りの羽根を持つキベリタテハ蝶(初めて見ました)が見送ってくれました。
山小屋デビューの部員もいるため、2泊とも、風呂付き、食事も評判の宿を予定しました。本沢温泉は2種の源泉があります。内湯はカーキ色、野天風呂は白濁。どちらも気分最高の温泉でした。加えて野天は、渓流沿に木を組んで湯船にした開放感抜群の湯で、硫黄岳の荒々しい火口壁を眺めらの入浴になります。これに入るだけでもここに来る価値はある。また行きたい。赤岳鉱泉では夕食にステーキが出ました。大いに食べ、飲みました。 天気にはけっして恵まれたとはいえませんが、すばらしい自然とふれあい、わくわくする変化に富んだ山歩きを堪能することができました。温泉もよかった、飯もよかった、仲間はもっとよかった!充実した夏合宿でした。

弁護士佐藤誠一

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アベ政治の憲法破壊と改憲を押し返すために ~参議院選挙の結果と「野党共闘+市民運動」~

2016.07.20

一、7月10日投票の参議院選挙では、自民が56、公明が14、おおさか維新が7、の議席を獲得して合計77、非改選議席と合わせて161議席。改憲派の非改選の無所属議員4を加えると、改憲勢力が参議院の定数242議席の3分の2である162議席を上回る結果となりました。
安倍首相は、この選挙戦の期間中、街頭演説で改憲について一言も触れなかったのにもかかわらず、この投票結果が出るや、改憲に向けて、衆参両院の憲法審査会でこの秋から審議を進めると言明。彼の「悲願」である党総裁任期中の改憲を彼一流の強引さで推し進めて来ると思われます。
安倍首相の自民党総裁の任期は、(規約改正などが無ければ)18年9月。衆議院の任期満了は18年12月です。国民投票は国会の発議があってから60日ないし180日以内とされていますが、初めての憲法改正国民投票だから180日は取る必要があるとの見方が強く、そうすると、この秋から1年半くらいの内には国会の発議を目指してくる可能性が大きいと言えましょう。日本国憲法にとって、深刻な事態です。
二、しかし、そうした安倍さん達の目論見はそう簡単に実現できるものではありません。
なんといっても、2/3を超えたと言っても、ギリギリのものでしかありません。また、公明党と安倍さん達とは改憲に向けての温度差がかなりあります。公明党の山口代表は、「(改憲について)各党の合意形成の手がかりも全くない状況だ。慌てないで議論をやっていくべき」と述べていますとおり、この発言は公明支持層の意識を反映ものと見て良いでしょう。また、「改憲派」といっても各党が主張する内容はまちまちで大きく違います。
そして何よりも大きいのは、世論とのねじれです。共同通信の投票所の出口調査では、安倍政権下での改憲に賛成は39.8%、反対50%、無回答10.2%。農業を基幹産業とする東北6県の1人区で自民は1勝(秋田)しかできませんでした。福島、沖縄では現職閣僚が落選し、鹿児島知事選では、脱原発派が当選しました。沖縄基地建設、原発推進、アベノミクス、TPP、戦争法、立憲主義破壊等々、どの世論調査を見ても安倍の政策は国民の支持を得てはいません。
こうした状況の中で、この秋から1年半くらいの内に国会発議にまで持ち込むのは、決して楽ではなく、世論が更に広がれば改憲勢力に動揺をもたらすことは必至です。
三、他方、立憲勢力は、民進、共産、社民、生活の4野党が史上初めて野党共闘を組み、32の1人区の全てで統一候補を立てて、11選挙区で野党側が勝利しました。この野党共闘がなかったら、結果は改憲派がさらに多くの議席を手にしたであろう事は明らかです。
今回の選挙は、単に4野党が共闘したということだけではなく(それだけでも画期的なのですが)、その共闘が、市民運動の拡がりが野党の背中を押して作った、「野党共闘+市民運動」の共闘だったことに極めて大きな意味があります。
原発反対運動、秘密法反対運動の拡がりからこの方、戦争法反対の大きな市民運動の中で、新しい市民達が次々と運動に参加し、若者、学者、ママ、弁護士等々等々の運動の輪が全国に拡がり、それが野党の背中を押して野党共闘が形作られてきました。そして、選挙も市民運動が野党と共に一緒に選挙に取り組んみました。まさに画期的な状況でした。
前述の1人区の選挙結果は、この「野党共闘+市民運動」の大きな効果を示しています。2013年の参議院選挙の時には、当時31の一人区で非自公はわずかに2議席。民主党全盛の2010年参議院選挙の時ですら当時29選挙区のうち8議席でした。それに比べると、今回の11議席という数字の大きさがわかります。そればかりか、1人区で、「野党統一候補の得票数/野党4党の比例の得票数」(=共闘達成率)は、全32選挙区平均で120%。100%以上は28選挙区。つまり、「1+1が2ではなく3にも4にもなる」と言う共闘効果が発揮されています。この「野党共闘+市民運動」を更に拡げることの中にこそ、憲法の破壊、改憲を阻止する展望があると言えましょう。
しかし他方、改憲勢力に2/3の議席を許してしまったことも事実です。世論調査を見ると、安倍政権の個々の政策は国民の支持を得てはいないにもかかわらずこの結果です。「アベノミクス」への幻想を未だ十分に払拭出来なかった。戦争法や立憲主義破壊の危険性、野党共闘の共通政策はまだまだ国民に浸透しなかった。また、野党共闘体制は、まだまだ安倍政治批判の受け皿に十分なりきれなかった、ということでしょう。
四、「野党共闘+市民運動」の共闘は日本の歴史の中でも初めての経験です。それが、今回それなりに大きな具体的成果をもたらしました。しかしこの共闘は、まだまだ始まったばかりであり、未成熟で初歩的なものです。それは、衆議院選挙(今回は同日選挙は回避されましたが)、政権交代まで視野に入れた共通政策と共同の体制の構築にまで至っていません。
したがって、この市民の運動を更に拡げ、発展・深化させること。その力で野党の背中を更に押して、政権を争う衆議院選挙に向けて共通政策と共同の体制の構築を目指すこと。そうしてこそが憲法の破壊、改憲を阻止する展望が寄り大きく切り開かれると思います。
私たち南部事務所の所員も、大田の地域で、それぞれの持ち場で、戦争法廃止、憲法改悪阻止のためにがんばりたいと思います。これからもよろしくお願い致します。
弁護士 海部 幸造

新たに選挙権を得たあなたへ ~いよいよ18歳選挙権選挙がスタート~

2016.06.28

6月22日に参議院選が公示されました。7月10日の投票日まで各候補は選挙戦にしのぎを削ることでしょう。この参議院選が18歳選挙権選挙の記念すべき最初の選挙になるわけですね。日本で女性が初めて選挙に参加したのが1946年4月の総選挙でした。くしくも今年はその60周年の年にあたります。
18歳選挙権はマスコミでも盛んに取り上げられています。でも多くは「投票に行きますか」という観点で、おもしろくありませんね。18歳の年代にふさわしい話題を振ってほしいですね。たとえば、大学に進学するというときに、たいへんなお金がかかる。今の日本はお金がないと大学に進学できない国です。お金がない人は、奨学金という名の借金をしなければなりません。高校時代からこの奨学金のお世話になっている方もいらっしゃいます。学校を卒業して社会人になった時には、何百万円も借金を抱えているという方々も少なくありません。せっかく社会人になっても借金返済のために働くような毎日では、何のために大学に進学したのかわかりません。弁護士の実務経験では、住宅ローンを別にすれば500万円もの借金抱えたら破産事案、と考えます。それに匹敵する借金です。
お金がないと大学に行けない、借金しないと大学にいけない、これが当たり前だと皆さん思っていませんか、とんでもない間違いです。世界を見渡して、ヨーロッパ、アジア・アメリカなど経済活動の盛んな国々で、お金がないと大学に行けない、借金しないと大学にいけないなんてほとんどありません。特にヨーロッパ、北欧の国々は大学に通うのにお金がかかりません。ただ(無料)です。日本ではお金がないと大学に行けない、借金しないと大学にいけないと聞くと、彼らは「クレイジー」と笑います。世界でお金がないと大学に行けない、借金しないと大学にいけない代表的な国は3つです。アメリカ、韓国、そして日本です(軍事同盟で結ばれた3国ですね)。恥ずかしいではありませんか。これを改めることはできるんです。それが選挙です。選挙で、借金なしに大学に通える日本に改めようという政策を持つ政党・候補者を選べば、日本の政治は変わります。
高校生・大学生でアルバイトをしている人、これからアルバイトをしようという人いらしゃるでしょう。ブラックバイト、ご存じですね、残業代も払わない、約束した給料だってまともに払わない、遅刻すれば罰金、試験があるからと行っても休ませてくれない、やめたいといってもやめさえてもらえない、こんなブラックバイトを放置している今の政治を改める、これも選挙でできることですね。
学生を終えて就職しようとしても、正規雇用の職場がない、非正規しかない、派遣・パート・アルバイト、これでは給料は安い、何年働いても給料が上がらない、いつ首になるかもわからない、これでは結婚もできない、正規雇用を減らして非正規ばかりにしょうとしている今の政治を改めること、それができるのが選挙です。
こんなふうに新たに有権者の仲間入りした皆さんに、訴えたいですね。みんなの希望を、要望を、選挙を通じて実現しましょう!選挙に是非行きましょう!

弁護士 佐藤誠一