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離婚に際して相手方へ請求するものとして考えられるのは、①婚姻費用、②養育費、③財産分与、④慰謝料の請求があります。
①婚姻費用
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用(夫婦と子の衣食住の費用、子の出産・養育・教育費用、病気の治療費等)を分担するものとされています。共働きの場合やどちらかに貸家収入などがある場合は、収入額に応じて按分負担するのが原則です。
婚姻費用の分担義務は、夫婦の関係が破綻して別居している場合であっても、離婚するまではなくならないとされています。もっとも、別居の事情によっては、分担額が大幅に減額されることもあります。
婚姻費用の分担については、夫婦間の協議で決定できれば、協議で取り決めます。協議で決定できないときは、家庭裁判所へ婚姻費用分担の調停申し立てをすることができます。
②養育費
親は、未成年の子どもに対し、自分と同程度の生活を保障する義務を負っています。夫婦が婚姻中は、婚姻費用として父母の間で分担されますが、離婚した場合は、子どもを引き取らない側が、実際に子どもを引き取って養育する側に対し、養育費として分担分を支払うことになります。また、養育費の請求権は子どもの権利なので、養育する親が養育費をいらないといっても、子どもが扶養を必要とする限り、支払義務を免れることはできません。
養育費の負担額は、両親の話し合いで決めることになりますが、話し合いができない場合やまとまらない場合には、家庭裁判所へ調停の申立てをし、調停か審判で決めてもらうこととなります。
③財産分与
離婚に際して、一方は、他方に財産分与の請求ができます。財産分与の有無や方法については、当事者間で話し合って決めるのが原則です。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ離婚調停の申し立て、その調停手続きの中で財産分与の請求をして決めることになります。
また、財産がなくても財産分与が認められる場合もあります(会社を夫が経営しており、そのうちの一部が実質上は夫婦の共有財産であるといえる場合等)。
すでに離婚してしまった場合でも、離婚届提出後2年以内であれば、家庭裁判所に調停や審判の申立てをすることができます(2年の期間には十分気を付けてください。)。
④慰謝料
離婚の原因が不貞行為や暴力であれば、その原因となった行為自体によって精神的な苦痛を味わうことになりますから、原因行為が不法行為として、損害賠償の原因となります。
さらに、裁判所は、離婚自体の慰謝料も認めています。夫婦がその一方の有責不法な行為によって離婚のやむなきに至ったときは、個別の行為が必ずしも相手方の身体・自由・名誉等に対する重大な侵害行為に当たらなくても、慰謝料を請求することができるとしています。
もっとも、慰謝料は不法行為の加害者から被害者に支払われるものなので、離婚についての責任のある当事者から相手方に支払われるものです。よって、性格の不一致等で離婚する場合のように、どちらが悪いとも言い難い場合には慰謝料はもらえません。また、双方に同程度の責任があるときも慰謝料請求は否定されています。
このように、相手方に対し、離婚に伴って行いうる請求は複数あります。また、請求する場合には、どのように、そして、どの程度請求することができるのか等、分かりづらいところもございます。
お悩みの方は是非、弁護士へご相談ください。