A.
建物を建てる際に、地下室を作ったり、大きな建物の場合に、基礎を作るために土地を深く掘削する場合があります。その際に隣の土地近くまで掘り下げた結果、土が流れ出したり、崩落したりして、隣の建物の基礎を支えている地盤がゆるんだり崩落して建物が傾いてしまうことがあります。土地の所有者は自分の土地だからといって何をしても良いものではなく、自分の土地の工事を行う場合、隣地にこのような影響を及ぼすことを避ける責任があります。隣地に影響の無いように境界から離れて工事をするとか、境界に近い場合には土止めをきちんと行うなどして、隣地に影響を及ぼさないようにする注意義務があるのです。この注意義務に違反して、隣地に影響を及ぼし建物を傾かせてしまったときは、その損害を賠償する責任を負います(民法709条)。損害の内容としては、傾きの原因調査、補修方法の調査費用、補修の工事費用が主なものです。傾斜が激しく補修ができない場合には、建て直し費用まで請求できる場合があります。ただしこの場合には、傾いた建物が古い場合と、新築あるいは新築に近い場合などによって、異なってきます。傾きの原因が隣地の工事ではない場合には、自分の建物の土地や基礎に瑕疵があったということになりますので、建売住宅や中古住宅であれば、売主の責任を問うことになります。この場合、損害賠償に加えて、あるいは損害賠償に替えて、修補請求ができるかという点については、明文の規定はないものの、これを認めるとするのが多数説です。場合によっては契約の解除も可能です(民法570条、566条)。また建築工事業者に頼んで建築してもらった場合は、建築業者の責任を問うことになります。この場合には、瑕疵の修補請求、損害賠償の請求などが可能です(民法634条)。ただし、建物など、土地の工作物については契約の解除はできません(民法635条)。