Q.地方へ転勤している間だけ自宅を賃貸したいと考えていますが、良い方法はありますか。

A.

 建物を賃貸する場合、期間を定めて賃貸しますが、この期間が満了しても、必ずしも返してもらえるわけではありません。借地借家法によりますと、通常の建物賃貸借契約では、期間が満了する1年前から6ヶ月前までの間に更新をしない旨の通知などを出さないと、従前の契約と同一の条件(但し期間の定めはなくなります)で契約を更新したものと見なされます(借地借家法26条1項)。また、このような更新拒絶の手続きをした場合であっても、その拒絶に正当事由が認められない場合には、拒絶の効果は発生しません(借地借家法28条)。正当事由には建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情や、賃貸借にかかる従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、明渡しに際して賃貸人が提供を申し出た財産上の給付(いわゆる明渡料)などが考慮されることになります。賃貸人の側の事情だけでなく、賃借人の側の事情も重要な事情として斟酌されますので、転勤が終了したという事情があっても明渡しが認められない場合も出てきます。これでは、転勤中、自宅を空き家にしておかなければならなくなり、社会的にも損失となります。そこでこのような事情や、どうしても決まった期日に確実に明け渡してもらいたいという要望に対して、2000年3月から通常の建物賃貸借契約とは別に定期建物賃貸借という、契約の形態が定められました(借地借家法38条)。この契約を締結しようとする場合、次の条件を守る必要があります。①書面で賃貸借契約を締結すること。通常の建物賃貸借契約は、書面が無くとも結ぶことができますが、定期建物賃貸借は必ず書面(公正証書である必要はありません)で締結する必要があります。②契約書では、契約の更新がないことを明示すること。③契約前に、契約書とは別の書面に、契約の更新がないこと、期間の満了により賃貸借は終了することを記載して交付し、その旨を賃借人に説明すること。です。さらに、賃貸借期間を1年以上と定めた定期建物賃貸借契約では、契約通りの期間で返してもらうためには、期間満了の1年前から6か月前までの間に期間満了により契約が終了することを通知しなければなりません。これを怠りますと、明渡してもらえる日が、請求の時から6ヶ月経過後ということになり、期日通りに明渡しを得られないこともありますので、注意しなければいけません。