A.
地主の立場から見れば、前問のように、期間が満了しても土地を明け渡してもらえないならば、せめて更新料を支払ってもらいたいと考えるのももっともなところがあります。しかし、先にも説明したように、期間満了に際して合意がない場合であっても、多くの場合法定更新の制度により、契約は更新されます。法定更新の要件は法律に定められており、更新料の支払いは求められていません。借地人から見ると、法定更新による更新を望むのであれば、更新料の支払いの必要はないこととなります。法定更新ではなく合意による更新を希望するのであれば、その合意に何を含ませるかということは、当事者間の自由ということになり、話し合いの内容によっては更新料を支払うこともあり得ます。合意更新による賃貸借の継続をするか、法定更新により継続するかについては、例えば、借地権を譲渡したい(これは地主の承諾が無くてはできません)ので、あらかじめ(更新の際に)その承諾を得ておきたいなど、借地人にとって合意更新をするメリットがある場合、その合意のなかで更新料を支払うことを約束することはあり得ます。
このように更新料の請求は当然にできるものではないので、契約書にあらかじめ更新料支払いの約束を入れておく場合があります。この場合であっても、法定更新制度を排除することはできません。法定更新の規定は、強行規定となっており、この規定に反する特約で借地権者に不利なものは無効とされています(借地借家法9条)。したがって、必ず更新料の支払いを得られるとは限りません。裁判例では、土地の賃貸借契約の法定更新の場合、更新料支払い特約に基づいての更新料請求を認めないものがあります(東京高裁平成11年6月28日判決及びこの原審の東京地裁判決など)。
なお、借家契約では、更新料支払い特約による更新料請求は、これを肯定する判決が多いのですが、金額が高額に過ぎる場合には消費者契約法違反として無効になることがあります(最高裁平成23年7月15日判決)。