Q.家賃の支払いが1、2回遅れてしまったのですが、賃貸人から退去を求められています。どうしたらよいでしょうか。

A.

 賃料の支払いは、とくに定めのない場合、毎月末日にその月分を払う(民法614条)ことになるのですが、契約書などでは、一般的には毎月末にその翌月分を支払うとなっていることが多いので、その場合にはこの約束を守る必要があります。

 賃料支払い債務は賃借人の基本的な債務ですから、これを支払わなかったり、遅れたりすると債務不履行となり、契約を解除される原因となります。

 賃貸借契約の期間は普通かなりの長期にわたるため、その途中で1回や2回、あるいは1ヶ月や2ヶ月遅れたからといって直ちに契約の解除理由となるかについては裁判上も争いになることがあり、信頼関係は破壊されていないとして契約解除を認めなかった裁判例もあります(東京地方裁判所昭和54年12月14日の判決は、遅滞の原因が、印鑑紛失により貯金の引出ができなかったためであるなどの賃借人側の事情を考慮して、3か月分の賃料の遅滞について、契約解除を認めませんでした。)。

しかしながら、賃料の不払いや遅延は、はっきりとした契約の違反ですので、放置してはいけません。賃貸人が退去を求めているというのは、契約解除の意思表示があったと考えて良いので、直ちに対処する必要があります。

 まず遅れていた賃料を賃貸人に持参して受領してもらうよう申し入れる必要があります。何も言わずに受け取ってもらえれば、解除の意思表示が撤回されたものとして、無事に済むこともあります。
ただし、このようなことが何度も重なると、たとえ少ない月数の遅滞でも、信頼関係破壊として契約解除が認められる場合が出てきますので、今後は注意をして遅れないようにする必要があります。
 受領を拒絶されたときでも、受領拒絶を理由として家賃を法務局に供託をするという方法があります。

 供託をしても、遅滞していたという事実自体がなくなるものではありませんが、支払意思があることを後々まで明確にしておくためには供託をした方が良いと思われます。
 裁判になったときは、信頼関係は破壊されていないと主張して裁判所の理解を得る必要があります。