大田ところどころ  100万人のキャンドルナイト@池上本門寺
〜でんきを消してスローな夜を〜
    
 夏至。1年のうちで一番昼が長く夜が短い日。みなさんは今年の夏至をどのように過ごしましたか?
 この夏至の日に向けて週末含めた数日間、「100万人のキャンドルナイト」というイベントが行われており、ここ大田区では池上にある池上本門寺で行われました。
 
 キャンドルナイト、とは「でんきを消してスローな夜を」を合言葉に、夏至と冬至の夜8時〜10時の2時間、みんなででんきを消して、キャンドルの灯りで過ごそうというもの。もともとは、2001年、景気をよくするために原子力発電所をたくさん作り、でんきをたくさん供給しようというアメリカのブッシュ大統領のエネルギー政策に反対して、カナダで「自主停電運動」が起こったことが始まりですが、今では地球規模で行なわれているイベントになっています。日本では2003年の夏至からNGOなどの呼びかけにより始まり、今では環境省、各自治体、多くの企業の後援もあり全国的な動きとなっています。始まってまだ数年のイベントですが、去年は東京タワーを始めとするライトダウン施設が2万2716カ所(!)、参加者は約664万人(!!)、だったそうです。

 池上本門寺といえば、大田区池上のランドマーク。このイベントに賛同し、今年で2年目の参加とのことです。当日は梅雨の最中、貴重な晴れ間に感謝しつつ、19時よりキャンドルナイトスタート☆ いつもはライトアップされている五重塔は消灯され、高台にある本殿へと向かう石段(此経難持坂)に竹製のランタンが灯されました。ゆらゆらと揺れるランタンの灯りはとても幻想的でやさしい灯りでした。この竹製ランタンは、予め配布された竹にそれぞれが思い思いのデザインを施したものが使われているため、一つ一つのかおの違いを見て歩くのも楽しいものです。自分で作ったランタンを探して喜ぶ子どもたちや、石段にじっと座る老夫婦、たくさんの人たちが思い思いの時間を過ごしている様でした。しかし風が強く、途中から雨が降ってきてしまったのがとても残念でした。
「でんきを消してスローな夜を」…ただそれだけをコンセプトに、1人の呼びかけがたった数年間で600万人もの人たちが関わるに至るそのパワーに驚きました。そこには「環境にやさしい」とか「地球温暖化を止めるために」とか「石油に依存したエネルギー政策に反対して」という文言はありません。でもだからこそ、もともと環境に関心のある人にだけ届くメッセージとならず、間口が広く多くの人々の共通言語、となり得たのかもしれません。
 ただ、でんきを消す、ローソクを灯す、あるいは暗闇で過ごす、というシンプルな行動を通じて、そこから一人ひとりが何かを考えるきっかけにはなりそうです。ある人は自分自身を振り返るかもしれないし、ある人は大切な誰かのことを想うかもしれない、またある人は地球と人間の未来を考えるかもしれない。一人ひとりがそれぞれの考えを胸に、ただ数時間、でも多くの人が、ゆるやかにつながっていることを感じられるなんてちょっとステキだなと思います。
 たまにはスローな時間、過ごすのもいいですね。

事務局 永井佐代子

なんぶ2001年夏号