布川事件、再審の舞台へ
弁護士 佐藤 誠一
1967年8月30日の朝、千葉県利根町布川で独り暮しの老人が自宅で殺害されているのが発見されました。別件で逮捕された桜井さんと杉山さんの二人が、警察の取調で「自白」を強要され、その自白を根拠に、裁判で無期懲役の判決を受け、最高裁まで争いましたが、有罪判決はくつがえることはありませんでした。
二人は、29年間も刑務所に囚われた末に、1996年11月、仮釈放となりました。この事件では物的証拠が一つもなく目撃者もいなかったため、「自白」をどう見るか、が裁判の最大の争点になりました。日弁連では、この「自白」は信用できないとして、桜井さんらの無罪を明らかにするため、早くから裁判の支援をしてきました。
長い間の苦労が実り、昨年の9月21日、2度目の再審請求について、水戸地裁土浦支部で、再審開始決定が出されました。
この再審請求では、当事務所にかつて在籍し、2003年に逝去された、山川豊弁護士も弁護団に参加していました。山川弁護士は、手術が不可能な肝臓がんであることが判明した後に、病をおして法医学者に対する重要な証人尋問に立ち会い、「おれはやったぞ。あとは頼んだ。」と言い残し、翌月亡くなったのでした。山川弁護士の働きなくしては、今回の再審開始決定を得ることはできなかったでしょう。
その後検察が再審開始決定に異議を出したため、東京高等裁判所でさらに闘いは継続しています。私たちは、桜井さん、杉山さんを今後とも支援して行く決意です。
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〜最近面白かった本〜編
「イン・ザ・プール」文芸春秋
「ララピポ」幻冬舎
弁護士 大森 夏織
「泣ける」映画や本がはやっていますが、泣かせるより笑わせるほうが、数段難しく、才能が必要ではないでしょうか。この2冊は、「空中ブランコ」 で一昨年直木賞を受賞した、奥田英朗の小説です。バカ笑いしたので、読んで損はありません。
「イン・ザ・プール」は、注射フェチでマザコン、でぶで特異性格の精神科医を主人公とする連作で、爽快かつ心温まる読後感が得られます。続編「空中ブランコ」とあわせてお読みください。
「ララピポ」も、作者のほとばしる才能が心地よい傑作です。タイトルの意味を知ったときには感動を覚えました。ただし、本の帯にあるように、内容が極めて「お下劣」なので、「紳士淑女」と18歳未満にはお奨めできません。とはいえ、作品と文章は品格があります。善人の青年がイラクで首を刎ねられても「自己責任」と言い放ったり、経団連会長(当時)が武器を売りたがったり、2世3世政治家が、金もコネもない貧乏人に「自助努力」を弁舌さわやかに強いたりするおふるまいのほうが、よっぽど下品だと思います。
お正月休みに、奥田英朗の小説を、是非どうぞ。初期の「最悪」「邪魔」、近作「サウスバウンド」その他も面白いです。
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