私の病気を原爆症と認めてください | |
被爆者・東さんの勝利判決と原爆症認定集団訴訟について | |
弁護士 安 原 幸 彦 | |
東訴訟勝利判決 04年3月31日、東京地裁は、長崎の爆心地から約1.3キロにあった三菱兵器製作所大橋工場で被爆した東数男(あずまかずお)さんの肝機能障害を原爆症(原爆の放射線による病気)と認める画期的な判決を下しました。東さんが原爆症の認定申請をしてから約10年、申請を却下され提訴してから数えても約5年に及ぶ闘いがようやく実を結んだのです。この裁判で、国側は、肝機能障害が原爆の放射線によるものであることを東さん側が科学的に立証しない限り、原爆症とは認められないと主張しました。しかし判決は、原爆被害が凄惨で且つ未解明である実態を重視して、厳密な科学的証明にこだわらず、東さんの被爆状況、被爆後の行動、その後の生活状況、具体的症状や発症に至る経過等を全体的・総合的に判断し、東さんの原爆被爆が肝機能障害を発症または促進させたと判示したのです。 原爆症認定とは アメリカは、1945年8月6日広島に、9日長崎に原子爆弾を投下しました。後にも先にも、人間に対して核兵器が使われたのは、広島と長崎だけです。この2回の原爆投下で20万人を越える市民が死亡しました。かろうじて生き残った被爆者もその後60年にわたって、放射線による癌などの後遺症に苦しんでいます。 被爆者が原爆放射線による病気になると、厚生労働大臣が「原爆症」と認定して、医療の給付や手当の支給がされることになっています。これが原爆症認定です。ところが、厚生労働省は、なかなか被爆者の病気を原爆症と認めようとしません。そのため、認定を受けた被爆者は、全被爆者の1%以下という現状にあります。 これは、原爆被害を狭く、軽く見ようとする国の姿勢によるものですが、その根元には、核兵器は人道に反する兵器ではないとする核兵器肯定の思想が横たわっています。そこが、実際に核兵器の被害を体験した被爆者には許せないところなのです。 |
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完全勝利に沸く原告団 |
東訴訟の勝利を集団訴訟の勝利へ 今全国で160人余りの被爆者が、東さんと同様に原爆症認定訴訟を起こしています。これまで東さん以外に3人の被爆者が裁判を起こして勝訴しました。その判決では繰り返し厚生労働省の認定行政が批判されました。しかし、被爆者行政は一向に改善されませんでした。原爆被害を軽視するこうした国の姿勢に怒った全国の被爆者が、2003年以来次々と原爆症認定集団訴訟を起こしたのです。 東さんの裁判は、厚生労働大臣が控訴したので、闘いの場は高裁に移りました。しかし、東京地裁の行政専門部で出された判決は重みのあるものです。早期に高裁でも勝利し、全国で展開される集団訴訟にはずみをつけたいと思います。 |