組織的窃盗犯による預金不正払戻の多発
1998年ころから組織的なピッキング窃盗犯グループが預金通帳と銀行届出印(あるいは預金通帳のみ)を盗み、銀行の窓口で盗んだ預金通帳を利用して預金を不正に払い戻す事件が続発しています。これらの不正払戻の中には、預金通帳だけを盗み、預金通帳に届出印として押されている印影(副印鑑)からパソコンのスキャナー等で印影を偽造したものが多数含まれているのが特徴です。これらの事件は、大手都市銀行だけでも1999年1年間に300件から400件もの被害が出たと報じられており、その後も被害は一向に減っていません。
印影の確認では不正払戻を防止できない
皆さんもご承知のように、預金を払い戻すときには払戻請求書に銀行届出印を押して預金通帳と共に銀行の窓口に提示します。銀行は予め預金者が届け出ている印鑑届の印影と払戻請求書の印影が同一であれば、窓口に来ている人が預金者本人であると判断して預金を払い戻すわけです。そして、預金通帳と印影の同一性を確かめて預金を払い戻せば、たとえ預金者本人ではない無権限者に預金を払い戻してしまっても銀行は責任を負わないとされてきました。
従来は窃盗犯が預金通帳と銀行届出印を盗む事件が多発していたわけではありませんでしたし、印影の偽造は容易ではありませんでした。したがって、預金通帳と印影を確認すればたいていは不正払戻を防ぐことができました。しかし、上述した組織的窃盗の多発と印影偽造の容易化により、預金通帳と印影を確かめるだけでは不正払戻を防止できなくなってしまったのです。
対策を怠った銀行
それにも関わらず、銀行は預金通帳と印影の確認だけで預金を払い戻すという旧態依然たるやり方を続けました。被害の多発を受けて1999年には警視庁が銀行に印影の確認だけではダメだと具体的な警告を発しているのですが、それでも銀行は抜本的な対策を講じなかったのです。その結果、「ふつうの市民」がコツコツと貯めた預金が1日のうちになくなってしまうという悲劇がここ数年毎日のように起こっているのです。銀行の過失は重大です。
裁判所の姿勢をかえよう!
銀行が対策を怠った背景には、裁判所が「預金通帳と印影さえ確かめれば銀行は責任を負わない」という判断をとり続けてきたため不正払戻があっても銀行の腹は痛まなかったという事情があります。しかし、最高裁の判例は不正払戻がほとんどなかった1971年のものです。当時はスキャナーで印影を偽造することなどできませんでした。時代が変わったのですから、裁判所の判断も変更するのが当然です。現在「預金過誤払い弁護団」が銀行に対して被害にあった人の預金を返せという集団訴訟を起こしています。被害にあわれた方は遠慮なく当事務所までご連絡下さい。 |