憲法9条違反の自 衛 隊 海 外 派 兵 は 許 さ な い!!

「同時多発テロ」から
     自衛隊の海外派兵へ

 昨年9月11日に米国で起きた「同時多発テロ」に対する報復として、米軍等によるアフガニスタンへの「報復戦争」が10月7日開始された。そして、ブッシュ大統領は、「正義の側かテロの側か、中立はあり得ない」「我々に協力しない者は、すべて我々の敵だ」として、この「報復戦争」に協力・参加することを世界中の人々に突きつけた。
 国際テロリズムを抑止するためには、国際社会は一致して国連憲章と国際法に基づいて、テロ犯罪の容疑者とその組織に対して、法に基づく厳正な処罰を求める国際世論・連帯を組織し、軍事攻撃以外の途による冷静な検討が求められていた。
 しかし、「戦争熱」に浮かされたホワイトハウスが垂れ流す情報に乗って、米軍支援一辺倒に「前のめり」になった小泉首相は、自衛隊の「報復戦争」への派兵と日本国憲法の平和主義との整合性についての真摯な法案審議を求める世論を無視し、「憲法前文と9条には隙間がある」「神学論争はやめて常識でいこう」などと、ごまかし答弁に終始した。
パキスタン クェッタでの集会(日本共産党パキスタン調査団提供)
 この結果、「平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」と恐ろしく長い名称の法律が、わずか3週間のうちに成立してしまった。しかも、テロ対処のどさくさにまぎれて、国民の知る権利と報道の自由を否定・制限する「防衛秘密」法制まで導入してしまった。
 この法律に基づいて、小泉内閣は11月16日、アフガニスタンへの軍事出撃の舞台となっているインド洋上での燃料補給や物資輸送などの「米軍支援活動」をするために、海上自衛隊の護衛艦、補給艦、掃海母艦、航空自衛隊のC130輸送機などをインド洋にむけて派兵する「基本計画」を閣議決定し、タリバーン政権崩壊という急展開の事態に目もくれず、ひたすら海外派兵を急ぐため25日に佐世保、呉、横須賀から自衛艦を出港させてしまった。その活動範囲はグァムからペルシア湾まできわめて広い。
 こうして小泉首相は、現に米軍が戦争を行っている戦場に、戦後はじめて自衛隊を派兵し、この国を「戦争をする国」へと、その歩を大きく進めてしまった。
誕生以来最大の危機 憲法9条

 自衛隊の海外派兵は、人類が長年の努力によって20世紀に到達した「戦争は違法」、「武力行使禁止原則」を定めた国連憲章による国際紛争解決のための基本的枠組を否定し、「正義のための戦争」として「人道的な空爆」を正当化しようとする「逆流」に与する進路を選択してしまったことを意味する。
 99年5月、世界の100ヵ国余りの市民の代表によって開催された「ハーグ平和市民会議」において、「各国の議会は、日本国憲法第9条のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである」と宣言した。そして、戦火を逃れ東京に住むアフガン人アラヤリ・アブドル・ラウフさんらによって「日本は戦後、ほかの大国と違って、外国に軍隊を出さないことが世界の人たちに評価され、国際的な信頼を得たと思う。私はそれを尊敬している」と評価されてきた。この非戦・非軍事の日本国憲法は、21世紀最初の年に、その誕生の地で破壊されようとしている。まさに誕生以来最大の危機に立たされているのである。
「報復戦争」への加担と
  「加害者」としての日本


 日本とおなじく米軍の「報復戦争」に自国の軍隊を派兵したオーストラリアの国立大学教授ガヴァン・マコーマックは、憲法9条により海外に軍隊を出動させて戦争に参加してこなかった「戦後日本」の立場について、「この危機的状況のなかで平和憲法の道義的権威を背景に、日本はイスラム世界に敵もなく中東の戦争や紛争にかって関与したこともなく、アフガニスタンでの仲裁調停の役を演ずるまたとない立場にある」、また、アフガニスタンが必要としている開発・教育・福祉などの領域で「豊かな工業大国としてイニシアティブを取ることもできるはずである」と指摘している。
 しかし、武装した自衛隊のインド洋上での「報復戦争」への加担・派兵により、国際社会のなかで求められていたせっかくの日本の役割・立場を活かすことなく、罪のない多くのアフガニスタンの民間人を殺傷している米国の「報復戦争」に、日本も「加害者」として加担する道を選んでしまった。そのうえで、自衛隊派兵は「後方支援」であって戦争に参加していないといくら弁明しても、そのような弁明は世界には通用しない。
 戦乱と干ばつによって世界でもっとも貧しい国のひとつとなっているアフガニスタンの食糧事情は極度に逼迫し、400万人もが飢餓に直面、餓死寸前の者100万人と報告されていた(WHO 2000年6月報告)。そして、米軍の「報復戦争」による爆撃のため、食料などの救援物資の供給が絶たれ、飢餓状態はいちだんと深刻となっている。爆撃のすみやかな停止がないと本格的な冬の前に救援物資を届けられず、数百万人規模の犠牲者が出るだろうと危惧されている。このような「ジェノサイド」に加担する道に、テロ抑止のための「国際連帯」の美名のもとに、歩みだそうとしている。さらにブッシュ大統領は11月26日「アフガンは始まりにすぎない」として、「対テロ戦争」の次の標的として、湾岸戦争以来の敵イラクへの攻撃も示唆している。これに対して、小泉首相は「状況を見て判断するしかない」と、アフガン以外の米軍への支援を否定しない。これを許してよいのだろうか。
今こそ平和憲法を世界に!!

 私達は、米国と世界のなかにテロと軍事報復反対の声が次第にひろがっている事実に注目する。
 テロを根絶し法と理性による解決、軍事報復の即時中止、自衛隊の参戦反対を求める世論とともに、日本国憲法の徹底した非戦・非軍事の立場をいかし、21世紀の国際社会に、テロに対処する国際協力・地域協力をつくりあげるために、国連を中心に世界各国の市民と結束してさまざまなネットワークづくりに努力することが求められている。
 日本国憲法の非戦・非軍事の理念に確信を持ち、21世紀の第一歩を踏み出すことが、いまほど求められているときはないと思う。
     弁 護 士  船  尾   徹


クェッタ市内の病院で 空爆により傷ついた子供(日本共産党パキスタン調査団提供)

なんぶ2002冬号