役に立つ法律知識  個人債務者再生手続

 サラリーマン、主婦、個人事業者等が多額の借金をしてどうしても返せなくなってしまったとき、従来は債務整理の方法として任意整理と自己破産がありましたが、この4月から新たな債務整理の方法として「個人債務者再生手続」ができました。個人債務者再生手続は、裁判所の認可を得た返済計画に従って借金の一部を少しずつ返済することにより、残りの借金を免除してもらう方法です。
 個人債務者再生手続は、@借金などの債務の総額が3000万円以下で、A将来において継続的な収入を得る見込みのある人が利用できます。このうち、給料などの定期的な収入を安定して得る見込みのある人は「給与所得者等再生手続」、それ以外の人は「小規模個人再生手続」を利用することができます。


 給与所得者等再生手続の場合、@所得から生活費などを引いた金額の2年分(可処分所得要件)A債務総額の5分の1以上(但し最低でも100万円以上、最高300万円以下)という条件を満たす金額を、原則として3年以内に返済すれば足ります。
 小規模個人再生手続の場合可処分所得要件はありませんが、再生計画に対する債権者の書面決議が必要であり、所定の同意が得られないと、再生計画は認められません。


 個人債務者再生手続には従来の任意整理や自己破産に比べ以下のようなメリットがあります。
 まず任意整理は債務の全額を返済しなければなりませんでしたが、個人債務者再生手続は債務の一部を返済すれば足ります。また任意整理は債務整理に協力しない債権者がいるとうまくいきませんが、個人債務者再生手続は全ての債権者の同意が必要なわけではありませんし、再生手続開始決定があると給料の差押えなどの強制執行をとめることができます。
 他方自己破産の場合、ギャンブルなどで浪費して借金を作った人等は免責不許可となるおそれがありますし、生命保険や証券会社の外務員などの職業を持つ人は破産宣告から免責決定が確定するまでの間仕事ができなくなってしまうという問題点がありますが、個人債務者再生手続はそれらの人でも利用することができます。


 この他個人債務者再生手続には、住宅ローンについて返済期間の延長等を認め住宅を維持したまま再生手続を行う「住宅ローン条項」もあります。但し「住宅ローン条項」はいろいろと条件が厳しいので、この条項を使うことが適当かどうかについては慎重な検討が必要です。
 なお個人債務者再生手続については以上の他にも細かい要件がいろいろあります。任意整理、自己破産、個人債務者再生手続のいずれを選択すべきかについては当事務所の弁護士に遠慮なくご相談下さい。

                                               弁護士 永 野 靖


なんぶ2001年夏号