リストラをリストラ −企業の横暴を許さない−

2001.4.10空の安全を訴えて銀座をパレードするJAL機長組合のみなさん

 小泉内閣が成立し、異常とも思われるような人気が続いています。この内閣の目玉は「構造改革」ですが、問題は「痛みを伴う」ということです。いったい誰の「痛み」なのでしょうか。小泉内閣の「骨太の構造改革」のもとでの痛みは、企業倒産や失業により、労働者など「経済的な弱者」の痛みであることが明確になってきました。
 長く続く不況の中で、産業や企業の再編成を理由とした会社の分割、営業譲渡などが盛んに行われています。その際には多くの場合人員の削減や、労働条件の変更など、リストラが行われます。また仕事がないことを理由に人員削減などのリストラが横行しています。このようなことが小泉内閣の下でさらに増えようとしているのです。
具体的には、不況や競争激化を乗り切るため労働条件の切り下げが許されるか、企業分割により会社の実態は分割したが、従来就労していた労働者が、当然に新たな企業に引き継がれるのか、また地位は引き継がれるとしても労働条件はどうなるのか、不況によるリストラなどでは希望退職に応じない労働者の解雇は自由にできるのか、といった法的問題として争われることとなります。
 私たちが取り扱う労働事件の中でもこのような問題が増えています。
 例えば、日本航空では、国際競争力強化を理由に経費削減の一環として、機長の長時間乗務手当が一方的に切り下げられました。日本航空機長組合は、この切り下げの効力を争って闘っています。
 日本教具(ユージー(株))の民事再生手続では、営業譲渡を受けることに名乗りを上げている企業が、従来の従業員をどれだけ再雇用するかの交渉が続いています。
 さらに最近話題となっているセガの事件もリストラをめぐる事件です。セガでは昨年千葉県にある矢口工場を閉鎖しましたが、その際矢口工場に働いていた従業員について希望退職を募集しました。しかしこの募集に応じなかった従業員に対し会社は仕事がないとして自宅待機を命じ、併せて賃金の30パーセントをカットして支給するという対応をしています。また、従来在籍出向により関連会社で就労させていた労働者について会社は一方的に転籍を求めてきたのです。これを拒否した従業員に対しては、出向を解き、本社勤務にした上、仕事がないとして待機室に待機させています。労働者は仕事を与えられない中で、一体将来どうなるかという不安を抱えています。


セガのリストラ人権侵害と闘うJMIUセガ分会のみなさん
 企業がその都合により労働者の意思や生活を無視して企業を分割したり仕事を取り上げたり、さらには解雇したりすること許されることではありません。働く労働者や市民の権利が守られるよう、私たちも法律家として裁判を担ってがんばっています。
 なお、セガの件につきましては、8月23日組合と会社の間に和解が成立して、全面的解決をみています。
御支援ありがとうございました。
                                                   弁 護 士  清  見   栄

なんぶ2001年夏号