ヒデとえいこのこりゃな〜んだ? どうなる、司法 
                 −司法制度改革審議会、最終意見発表

えいこ ねえねえ、確か六月一二日に審議会の意見が出たっていうけど、どんなこと言ってるの?
ヒデ みんなが裁判に参加し、弁護士もいっぱい増えて相談しやすくなって、裁判官も弁護士からなれるようになるし、なんか、いいんじゃないって言ってるけど、どうかな。
えいこ 「一二人の怒れる男」みたいになったらかっこいいよね。
ヒデ 甘い甘い、ちゃんと言うとね、重大事件の刑事裁判については市民から選ばれた裁判員がプロの裁判官と同等の権限で、一緒に有罪無罪や量刑を判断する「裁判員制度」になるんだ。ただ、肝心の裁判員の数も決まってないし、裁判員の人数が少ないとプロの裁判官に言い負かされないか心配だよ。
えいこ フーン。でも、裁判官も弁護士からなれるんだったら、今よりは良い裁判官が増えるんじゃないの。
      えいこ              ヒデ
ヒデ そうとも言えないな。経験の浅い判事補が原則として一定期間法律事務所などで働いて経験を積むとか、裁判官選任の基準や評価を明確にして人事をガラス張りにするとか、弁護士から裁判官になるのを歓迎するとか、いろいろ言ってはいるけどね。結局、裁判官の官僚制度は残ったままだから、抜本的な改革じゃないよね。弁護士など社会の中で幅広い実務経験を持つ人の中から裁判官を選任して、市民感覚を反映させようっていう法曹一元制は採用されなかったからね。まあ、弁護士がみんな市民感覚にあふれてるかって言えば、どうかな。アハハハハ。
えいこ
 南部事務所の坂井先生が裁判官になったり、裁判官が弁護士になって南部事務所に来たりなんて面白いことはまだ先の話なんだね。でもロースクール(法科大学院)ができて、司法試験で年に三〇〇〇人も合格し、弁護士が五万人になるのはそう遠い話じゃないんでしょ。
ヒデ 最初のロースクール生の合格者が出るのは二〇〇七年頃、二〇一〇年には新しい試験制度に一本化され、法曹人口が五万人になるのは二〇一八年頃かな。
えいこ 裁判はうんと時間がかかるっていうけど、そんなにロースクールに受かるんだったら裁判官も増えて裁判もスムーズに進むだろうし、近くに弁護士がいなくて困る人も減るよね。私もロースクール受けちゃおうかな。
ヒデ こりゃまた甘い甘い、その頃、司法ビジネスには司法書士・税理士・弁理士さん達も参入して、けっこう競争きついと思うよ。それよりもっと大事なことは、意見書では不足している裁判官を大幅増員することが不可欠と言ってるけど、最高裁は今後一〇年間にたった五〇〇人くらいの増員としか言わないんだよ。法曹人口は増えるといっても、実際に迅速で公正な裁判が行われるために必要な裁判官の数がちゃんと確保できるようにするのもこれからの課題だよ。
えいこ そっかー。裁判や弁護士って言えば気になるのはお金のことだけど、弁護士費用が負けた人の負担(敗訴者負担)になるっていうのは、裁判に勝った人が有利になっていいよね。
ヒデ おっとー。敗訴者負担は消費者、公害、薬害、住民裁判などがとってもやりにくくなるって、反対の声が多いよ。ハンセン、ヤコブ、HIV、大気汚染公害、商工ローン相手の裁判なんて、み〜んなやってみなくちゃ分からないじゃん。世論を動かして初めて裁判にも勝てるわけだし。負けたら企業側の弁護士費用も住民持ちっていうんじゃ、誰も裁判しなくなっちゃうよ。
えいこ そっか、弱い立場の人が裁判を起こしにくくなるのはよくないね。
ヒデ だろ! せめて司法や裁判が身近に分かりやすく、何よりも働く人達が大歓迎っていえるものになってほしいね。
えいこ そのためにも、予算を増やしてほしいよね。財務省や国会にもどんどん働きかけるようガンバロー!
                                      (監修 弁護士 坂井興一)   

なんぶ2001年夏号