休憩室
       「私は歌が好き。」
                     弁護士 坂井 興一
私は、歌・歌番組を見聞きするのも好きである。…と云ってもその世界の時計もとうに止まっているから、必然、今はもう居ない人の歌中心になる。中でこの歌一つとなれば、カラオケがない方が歌える「初恋」で、奥田良三やその他のプロとは関係なく、我流で歌う。母校の先輩・啄木の「砂山の砂に腹這ひ/初恋の/いたみを遠く思い出づる日」である。それではチョットという時、これも明治43年発行の「一握の砂」のなかのもので、「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ/花を買ひ来て/妻としたしむ」を口にする。毀誉褒貶はあった彼の殊勝な気持ちを歌っている。喜びとしんみりさの調和が破れず、結婚式などハレの日でも紹介したくなる好きな歌の一つである。鴎外・与謝野夫妻の盛名人や、吉井勇・白秋、或いは同窓の金田一京助・野村胡堂など順調に歩んでいる面々を見れば、そんな気分になったであろうか。
歌謡曲などでは、私が東京や大人世界にあこがれた頃の歌手の中で、マ、裕次郎も好きで、大抵のを歌える。私にとって彼は若い頃の歌手裕次郎で、俳優や実業人、中年のボス役の彼ではない。ところでその兄慎太郎殿の方は、くじく相手が裕次郎とは何となく180度違っていて、弟の怩「い雰囲気の遺産揩好都合に食い潰しているように感じられ、昔から好きになれない。その兄殿が意義不明の2度日の五輪の立候補を大義名分に三選目に挑戦するという。日の丸・君が代、靖国・軍事好き、弱いものイジメ・意地悪人に思えてしまうこの人の、公私混同・不急大投資・大赤字路線への暴走を、地下の裕ちゃんは止めて呉れませんか!?


〜いち押しドラマ〜 
  マイ★ボス マイ★ヒーロー
  
                  弁護士 大森 夏織
 はじめに。このドラマを観て、例えば大杉漣のように素敵な「暴力団関係者」が実在するのではないかと純朴にも勘違いするお子さん方がいるかもしれず、その場合は親御さんその他周囲の大人がシビアな現実を教えてやらねばなりません。
 それはさておき。おバカなヤクザの若頭が高校生活をやり直すという、この学園ドラマを観て、久しぶりに「青春」とか「初恋」とか「元気」とか、自分の人生にはもはやてんで関係ない心持ちが、夏風のように胸を吹き抜けました。ああ、そんな単語もあったんだなあ、と。
 そしてラスト、登場人物の一人が「人はなぜ○○するのか」と問いかけるのですが、その○○(未見の方のため伏せる)の喜びも、自分はどこかに置き忘れてきちゃいないか?としみじみしました。
 常々、有能なプロデューサー、脚本家、演出家、音楽家、俳優陣その他もろもろ多数のスタッフがその力を最大限発揮し、最高度のドラマをつくりあげ、しかも視聴率をとる、ということは、なんと難しいことなのだろう、と歯がゆく思ってきました。
 このドラマは、そういう幸運な成果物のひとつであり、実に楽しいおすすめの一作です。
 私たちの仕事も同じことで、多くの優秀な頭脳と身体と気力が結集し、各人最大の長所が引き出され、最高の成果を上げるなんて、滅多にはないことでしょう。だったらまずお前がドラマばかり観てないできっちり仕事しろ、って言われそうですね。おわり。
※ドラマ
『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』
 2006・7/8〜9/16に放送された学園青春ラブコメディ。

なんぶ2002冬号