小笠原法律相談体験       弁護士 杉尾健太郎
母島にて、妻と 
 東京から南に約1000km、東京都小笠原村父島・母島へは、25時間以上の船旅でしか行けません。日本で最も隔絶された有人島です。法律専門家はおらず、裁判をするには霞ヶ関まで来なければなりません。この究極の司法過疎地で法律相談会を行うグループの一員として、昨年1月と7月、母島に渡りました。母島は人口450人ののどかな村ですが、人が暮らす所に紛争が絶えることはありません。島は南国ムードいっぱいですが、法律問題を抱えた人の悩みは都会と変わりません。私たちの法律相談会も島の人たちに受容れられています。ただ島社会であることの特殊性を無視した法的な解決は島の人たちのためにもなりません。一過性ではない島の人たちの生活に責任を持った活動を継続していくことが必要です。堅苦しいことを並べてみましたが、冬は島の周りをクジラがうようよと回遊し、夏はウミガメが産卵しに浜に上がって来る小笠原で心が洗われます。今年もまた1月末に小笠原に「出張」する予定です。が、いつかは仕事抜きで行きたいな。島の人たちに顔を覚えられてのんびりできなくなる前に。

  

ロースクール教授に就任    弁護士 塚原英治
 2004年4月から、早稲田大学に新設される法科大学院の客員教授に就任します。法科大学院は、2004年にスタートする新しい法律家の養成機関です。大学(法学部に限らず様々な専門を持った人が期待されている)を卒業した人(社会人を含む)が進学し、原則3年制の過程を経て、卒業者が新司法試験の受験資格を持つ仕組みです。
私は、専任(フルタイム)で、弁護士の役割と責任(法曹倫理)、司法制度論、民事訴訟実務の基礎、民事弁護実務(ローヤリング)、破綻処理法制の5科目を担当します。26年の弁護士経験を生かして新しい法律家を育てたいと思っています。弁護士としての兼職も認められていますが、法廷や事務所に出られる日も限られますので、多くは他の所員に分担してもらうことになります。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。


中国「残留孤児」国家賠償訴訟100万人署名へのご協力のお願い  弁護士 長尾詩子
 2002年12月、629人の原告が東京地裁に中国「残留孤児」国家賠償訴訟を提訴しました。その後、鹿児島・広島・京都・名古屋・高知と続々と提訴が続き、現在2400人といわれている中国「残留孤児」の過半数が原告となっています。訴訟を始めたばかりの段階で、このような数の原告がいるというのは未だかつてない規模の大訴訟です。
 昨年9月NHK「クローズアップ現代」でも、中国「残留孤児」は約7割が生活保護を受けたり、日本社会にとけ込めずに孤独な生活を強いられている状況が赤裸々に報道されました。このように世論も広まり、訴訟の重要性は益々高まってきています。
 現在、中国「残留孤児」問題の解決のために、原告団・弁護団ともに、100万人署名活動に取り組んでいます。裁判所に対して公平な判断をさせるために、ご協力いただきますようお願い申しあげます。
 また多くの方から、既に、様々な形でご支援いただいていることを、この場をお借りして心から御礼申しあげます。


なんぶ2002冬号