テレビでは連日、イラクでの戦闘の様子を映し出しています。それは、ブッシュ大統領が戦闘終結宣言を出した以降、現在でもかわりません。
そして、自衛隊のイラク派兵も、いよいよ現実味を帯びてきました。こうした一連の動きについて、事務所でも議論をし、私たちも何かしようということになりました。
そこでフォトジャーナリストの森住卓さんをお招きして、「イラク戦争とは何だったのか」という集会と写真展を開催しました。
集会当日(9月9日)は定員80名の会場に、140名をこえる大勢の方々にご参加いただきました。ありがとうございました。

衝撃!イラクの現実         事務局 泉 雅剛  それでも自衛隊はイラクへ行くのか  弁護士 早瀬 薫
 森住さんのカメラがとらえた写真には、マスコミが報道するイラク戦争とあまりにも異なる事実が映し出されていました。イラクでは湾岸戦争からずっと戦争が続いていて、経済制裁により医薬品すら輸入できない。そのため大きな病気でなくても薬がない為に治らない。91年の湾岸戦争や今回のイラク攻撃で大量に使用された、非常に放射性の高い「劣化ウラン弾」の影響による被害が甚大である。特に子供達に白血病や癌などが異常発生している事や、生まれたばかりの赤ちゃんも無脳症等の病気で30分も経たないうちに死んでいくという悲しい事実。また、放射能に汚染された場所で無邪気に遊ぶ子供達の姿、汚染された土地で暮らしていく人々の姿…。これらの現実を、スライドで映し出しながら、森住さんは淡々とお話をされました。
 参加者からは、「とても衝撃を受けました。どうして何の罪もない子供達がこんな目にあうのか。劣化ウラン弾を受けた戦車の前で笑っている子供達のあどけない笑顔が逆に悲しい。劣化ウラン弾の恐ろしさは、ほとんどマスコミで報道されていない。」等の感想を頂きました。
この企画を通じて、改めて戦争がもたらす虚しさを考えさせられました。多くの命が奪われ、放射能に汚染された大地は半永久的に元に戻りません。私たちはこの戦争の意味の重大さを深く考えていかなければなりません。
 ブッシュ大統領が戦闘終結宣言を行った昨年5月1日以降も、イラク米英占領軍への襲撃のニュースが続いています。攻撃の対象は国連の駐イラク事務所にまで拡大し、11月には日本人外交官が殺害されるなど、衰える気配がありません。11月15日時点における報道では、戦争開始以来の米軍の死者は事故も含め400人、また、5月1日のブッシュ大統領による戦闘終結宣言後の戦闘による死者も160人に達していると言われています。
 ところで、イラク派兵法は、自衛隊の活動範囲を「非戦闘地域」としています。しかし、現にイラク全土で戦闘が繰り返されているもとで、「非戦闘地域」に自衛隊を派兵するということ自体が不可能であることは明白です。
 森住さんは、講演の中で、イラクの人々にとっては「今回の戦争」というより湾岸戦争の時からずっと戦争が続いているという感覚です、と語りました。はたして、「戦争」は終わったのでしょうか。むしろ、「戦争」は終わっていないと考えるべきではないでしょうか。そうだとすれば、日本は、米英軍を支援することによってまさに「戦争」に加担しようとしているのです。
もちろん、イラクに対して、人道的な立場からの支援は不可欠です。日本は、世界唯一の被爆国として担うべき役割こそ、考えてみるべきではないでしょうか。


なんぶ2002冬号