いよいよ大詰め!
                 メーカー責任を前提に新しい被害者救済制度の実現を!              弁護士 堀  浩介
 東京大気汚染裁判とは
 東京大気汚染裁判は、東京都に居住する原告が、都内を走る国道・首都高速道路・都道から排出される排気ガス、特にディーゼル自動車の排出する排気ガスに含まれる浮遊粒子状物質による大気汚染によって、気管支ぜん息などの呼吸器疾患にかかり、健康面でも経済面でも、ひいては人間としての尊厳の面でも、重大な損害を受けたことに対して、国・東京都・自動車メーカー7社を相手に、損害賠償と汚染物質の排出差し止めを求めて、1996年5月に提訴した裁判です。現在、4次訴訟まで提起され、原告は518名(裁判中に亡くなった方を含む)を数えています。
1 判決の時迫る!!

  第一次訴訟は、昨年12月に全ての主張・立証を終え、結審しています。そして、いよいよ10月29日午前10時に判決が言い渡されます。この間、全国の公害裁判を闘う方々や多くの支援の労働者・市民のお力を頂いてきました。これを受けて、原告団は、被告の国・東京都・自動車メーカーの責任を明らかにするために奮闘してきました。提訴以来、およそ6年で判決の時を迎えることは、これまで全国で闘われてきた大気汚染裁判と比べても、かなり早期の進行です。これも、皆様のご支援のたまものと思っております。
  大気汚染について、道路の設置管理責任者である国や公団の責任を認めることは判例の確固たる流れとなっています。また、最近相次いで出された尼崎大気汚染訴訟、名古屋南部大気汚染訴訟の各地裁判決は、国や公団に対して大気汚染物質の差し止めを認めるという画期的な判決となっています。東京大気汚染訴訟でも、こうした判決の流れを引き継ぎ必ず勝利したい!と考えています。

2 自動車メーカーの責任を全面に

  また、東京大気汚染裁判の特徴は、ディーゼル自動車を製造している自動車メーカー7社を被告としていることです。これらのメーカーは、ディーゼルエンジンが健康に有害なディーゼル排気微粒子を排出することを知り、これを削減する技術を有していながら、利益を優先して対策を怠り、ひいては、国内向けには未規制車を、規制の厳しい外国には規制車を輸出するという許し難い対応をとってきました。メーカーの責任は明確です。私たちは、勝利判決をてこに、汚染者負担の原則=自動車メーカーの財源負担により、大気汚染被害に苦しむ東京の公害患者の早期救済を求めて闘います。この制度を獲得するまで、私たちが闘いを終えることはありません。メーカーも、原告らとの交渉に於いてこうした制度の必要性について言及する情勢になっています。
  大田でも、裁判支援の連絡会が6月に結成され、地域での宣伝・署名の取り組み、10月29日に予定されている判決に向けて運動を進めています。
  是非、多くの皆さんに、裁判への引き続きのご支援と、勝訴判決獲得後の判決実現の運動へご理解・ご参加をお願いいたします。

なんぶ2001年夏号