−教科書問題− 暑い夏の熱い闘い                  

          区役所前にて。『人間の鎖』
  教科書が危ない!

 昨年の夏、全国で「新しい歴史教科書をつくる会」(以下、つくる会)の教科書を採択するな!の運動が繰り広げられました。
 この教科書は、太平洋戦争を戦前の国定教科書と同じ「大東亜戦争」と表記し、従軍慰安婦や南京大虐殺などの日本の加害については否定していたり、神話を歴史的事実のように記載しているなど危険な内容がいっぱいでした。こんな教科書が採用されたら大変と、5月26日、大田労連、大田区労協、東京南部法律事務所の三者で「間違った歴史・公民教科書を子ども達に使わせない大田の会」を結成しました。大田区内ではすでに2月に個人加盟の「公正な教科書採択を求める大田区民の会」が結成されていましたので、そちらとも協力しあって進めることにしました。 
 教科書の採択は8月中旬、2ヶ月後です。採択の過程も知らないし、時間もない中で私たちの会の活動は大急ぎで走り出しました。

  区民の声をあげよう!

 まず、区議会と教育委員会に
「つくる会の教科書を採択しない・採択にあたっては教師や父母の意見を充分に聞いて欲しい」との陳情書を提出しました(いずれも不採択)。検定合格した教科書は採択前に一定期間展示され区民は意見を出せることを知り、大田区立の小・中学校の校長、PTA会長、社会科担当教諭あてに「教科書展示会に必ず行って、意見を出そう」という手紙を送り、多くの方に展示会に行くことを呼びかけました。
 その他にも、教育委員会あてに「つくる会の教科書を採択しないでほしい」という要請はがきを出したり、「つくる会」教科書の危険性を広く区民にも知らせようと街頭宣伝を行いました。区民の関心は高く、中には声をかけてくれる人もいて、暑い中汗をふきながらがんばりました。 

  ついに不採択!!

 7月27日の教育委員会に、私たちはあらためて「教科書採択は公開で行うように」と要請をしました。けれどもこの日の教育委員会は傍聴をたった10名しか認めず、しかも冒頭に「教科書審議・採択についてはすべて非公開」を決めてしまいました。しかしそれにもめげず、教育委員会が開催されるたびに大勢の人が傍聴を要求して集まり、特に採択直前の8月7日には大田区役所の前に130〜40名が集まって「人間の鎖」で庁舎を取り囲みました。
 こうした運動とかってない関心の高まりの中で、8月10日、大田区では「つくる会教科書」は不採択となりました。「間違った歴史・公民教科書を子供達に使わせない大田の会」は8月27日に声明を発表し、「よりよい教科書を子どもに手渡すためにさらに運動しよう」と新たに呼びかけてその活動を終えました。

  未来の子供達のために

 この運動を取り組んで感じたことは、教員も区民も知らないところで教科書採択が進められているということです。
 教科書展示会をとってみても、学校での展示は区内3箇所で平日のみ、しかも昼休みは入れません。働いている人は休みでも取らない限り行けないのです。教育委員会も非公開でした。決定後、情報公開で教科書採択の議事録を請求しても、発言者の名前は黒く消されています。これではまるで出来るだけ知らせないようにしているかのようです。
 私たちの知らない間に、知らない所で進められる教科書採択、こんなことでいいのでしょうか?「新しい歴史教科書をつくる会」は次回の採択にむけ今から準備をしています。「教科書採択は現場の教員や父母の意見を充分聞いて行ってほしい」、ごくあたりまえのこんな要求が拒まれることのないよう引き続き見守っていきましょう。
                                     事 務 局  吉  川  輝  子

なんぶ2002冬号