コラム

マイナンバー制度 Q&A

2016.05.24

今年1月からマイナンバー制度が運用を開始しました。多くの国民が制度を十分に理解していないのにスタートしてしまったこの制度。そもそも「マイナンバー」って何だろう?働く人は職場からマイナンバーの提出を求められた時、応じなければならないの?など疑問はつきません。
マイナンバー制度で気になるポイントをQ&A方式でまとめてみました。

                                                        弁護士 堀 浩介

Q1 一般個人について、マイナンバー制度が今年の1月から運用を開始されたと聞きましたが、これはどのような制度なのですか。
A1 マイナンバーとは、日本に住民票を有する全ての個人に一人一つの12桁の番号(「個人番号」)を付け、その個人識別機能を利用して、複数の行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する機関に存在する個人の情報が照合して、それの情報が同一人のものであることを確認するために活用するものです。
このことは、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下、「番号法」とします。)1条で、次のように表現されています。
「行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の有する特定の個人及び法人その他の団体を識別する機能を活用し、並びに当該機能によって異なる分野に属する情報を照合してこれらが同一の者に係るものであるかどうかを確認することができるものとして整備された情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことができるようにする」。
実際には、2017年1月から国の行政機関の間で情報連携を開始することが予定されており、同年7月を目途として地方公共団体なども含めた情報連携を開始することが予定されています。
番号法は、現時点では、個人番号の利用を、①社会保障分野(年金、健康保険、雇用保険、労災保険の支給、保険料の徴収に関する事務、生活保護の決定、実施に関する事務、公営住宅への入居申請など)、②税務分野(従業員が扶養控除等申告書を作成して事業主に提出する事務、あるいは事業主の源泉徴収事務、支払調書作成事務など)、③災害対策分野(被災者生活再建支援金の給付に関する事務、被災者台帳作成事務など)について、法令で定められた事務に限定しています。これ以外の目的で個人からマイナンバーを国民から取得することはできないとしています。
日本に住民票を有する全ての個人は、上記の利用目的のために、勤務先事業者(勤務先事業者が外部に業務委託をする場合もあります)を通じて、あるいは行政事務を処理する機関に直接、必要書類に個人番号を書き込む形で提出することになります。

Q2 昨年、個人番号を通知する文書を受領しましたが、その中に「個人番号カード」の申請に関する手続が説明する書類が同封されていました。今年に入っても、テレビの政府広報CMで、「個人番号カード」を作ったら便利になると宣伝しています。やはり作っておいた方がよいのでしょうか。
A2 「個人番号カード」とは、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他政令で定める事項が記載され、本人の写真が表示され、かつ、これらの事項その他総務省令で定める事項(以下、「カード記録事項」という。)が電磁的方法により記録されたカードです(番号法2条7項)。
このカードの発行を受けることで、前記A1に述べた行政手続をするに当たって、行政側に提出すべき書類の種類が若干減るといったメリット、免許証などに代わって身分証明書として利用できる、といった利点は確かにあります。
しかし、それを紛失したりすれば、他人が当人になりすまして、個人番号を不正に使用したり、個人番号カードを偽造されて、絶対的な「身分証」として悪用されるなどのリスクが高く、先に述べたメリットにおよそ見合わない結果が発生する危険性を否定できません。

Q3 事業者から私と扶養家族の個人番号を提供するように求められていますが、応じなければならないのでしょうか。
まず、事業者が、提供の要請に先立って、どのような目的で個人番号の提供を求めるのか、その具体的な内容を明らかにしているかを確認すべきです。事業者による周知の方法としては、社内LANにおける通知、書類の交付、就業規則への明記等の方法が考えられます。
目的が明示されていない限り、個人番号を提供すべきではありません。また、その目的が、前記Q1で述べた目的以外の目的であれば、そもそも事業者が提供を求めること自体違法です。
事業者が、従業員やその扶養家族について、個人番号を行政機関に提供することが法令上義務付けられていても(例えば、国税通則法、所得税法等)、法令上、そのことから直ちに労働者に対して提供を強制できるものではありません。事業者はあくまで従業員に対して提供に協力を求めるというスタンスに立っています。
労働者の中には、個人番号を提供した場合、事業者から個人番号が第三者に漏洩して、不正に利用されたり、自分の意思に反して事実に反する情報が提供・集積され、自身とは異なる虚構の人物像が一人歩きしてしまうことを恐れている人もいます。そして、こうした危惧は十分に根拠のあるものです。
したがって、労働者としては、提供をする場合にも、事業者の情報管理体制がしっかりしているか、を見定め、不十分と考えればその改善を求めるなどして、提供のリスクを最小限に抑えることが必要だと言えます。

Q4 個人番号を提供しなかった場合、どのような不利益が考えられるでしょうか。
A4 特筆すべき不利益はないと考えられます。
個人番号を提供しないことで、事業者にとって事務手続き上の支障が生じることは事実ですが、現時点では、そのことを理由に事務の実施を拒否する法令上の根拠を欠いており、事務の実施は拒否できないものと考えられます。
ただし、事務の実施に当たり、個人番号の提供がなかったことによる行政手続き上の不利益(現時点では具体的には明らかではない。)は労働者本人が負うことになります。
ちなみに、事業者から個人番号の提供を求められる局面の一つとして、法定調書や確定申告書に記載することが必要だから、という理由が考えられますが、現状では、国税当局から、個人番号の記載がなくても、法定調書・確定申告書は受理するとの回答がなされています。

Q5 事業者が個人番号の事業者への提供についての協力義務を労働契約や就業規則で明記している場合、提供を拒否することに問題はないのですか。
A5 提供を拒否した場合に、事業者が労働契約や就業規則違反を理由に懲戒処分を行うことは、特定個人情報の管理体制が不十分であり、事業者として労働者を保護すべき信義則上の義務(労働契約法3条4項)を果たしていないといった場合は格別、協力義務(服務規律)違反として懲戒処分をすることは違法無効とまでは言えないと考えられます。
ただし、本人のプライバシーの尊重の観点から、重大な懲戒処分(減給や出勤停止、懲戒解雇など)は許されないと考えるべきでしょう。

労働組合の本を書く

2016.05.10

 1999年に労働契約と労働組合の2冊の法律相談書を出した。当初声をかけたある出版社は、労働組合の本など売れないと言った。そんなことはない。日本評論社から出した初版は好評で増刷し、2007年には第2版を出した。労働者・労働組合が座右における読みやすい本がなくなっていたから、必要とされていたのだ。
事務所の40周年記念として企画したものであり、顧問組合に役立つものにしたいと思ったので、取り上げる項目や取り上げる判例・裁判例は、事務所が扱った相談や事件を重点的に取り上げた。航空・ハイタク関係の特殊問題、刑事事件や街頭活動、政治活動まで1冊で載っているのは珍しくまた便利だと言われるが、長年組合の顧問として相談を受けていたことをまとめているのだから当然とも言える。
私も若い頃は労働組合のオルグに協力して組合作りの学習会をずいぶんやった。ラーメン屋の2階で2人や3人を相手に学習会をして、報酬はラーメン1杯などということも珍しくなかった。大田には「組合作り共同センター」があって、ニュースを発行していたので、そこに法律の解説を連載した。学びたいと思っている労働者や労働組合の活動家に伝わるように、短くわかりやすく書くことが大事で、それがこの本のベースになっている。
在庫がなくなり、本が欲しい、新しい本は出ないのかという電話が事務所に入るようになったので、新版を出すことにして、2月に『新・労働組合Q&A』を刊行した。
労働法は、闘いの中で作られてきたものであり、今も動いている。この本では、「労働組合の歴史と法律のかかわり」という部分を初めにおいて、そのことを説明している。
また、具体的な問題にふれるために、判例(最高裁の判決・決定で先例としての意味を持つもの)や裁判例(下級審の個別の判断)をいくつも引用している。これは、現在、ものごとが裁判所でどのように扱われているかを示したものである。裁判所の判断は変わるものである。そこで、「ここに書かれたことを固定的に考えないでほしい。私たちは、闘いのなかから判例をつくり出す、判例を動かしていく努力をしている。」というメッセージも入れた。
私は、2010年から法科大学院で労働法の授業もするようになった(実に9科目も教えているのだ)。代表的な市販のケースブック(判例を中心にまとめた教材)を使っているが、私の担当事件や事務所の弁護士が担当した事件がいくつも取り上げられている。苦労したことや勝利したときの喜びを思い返しながら、授業の準備をしている。
今回の新版では、教えながら考えたことを少し加えている。多くの人に役立ててもらえればうれしい。
弁護士 塚原英治

コラムはじめました。

2015.12.22

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